不明熱

六訂版 家庭医学大全科 「不明熱」の解説

不明熱
(感染症)

 不明熱とは、古典的には38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、1週間の入院検査でも診断がつかないものと定義されています。しかし、実際には原因疾患の特定が困難な高熱疾患の意味合いで使用されていることもあります。

 不明熱の主な原因としては、感染症、悪性腫瘍膠原病(こうげんびょう)およびその類縁疾患の3つがあげられます。感染症では、粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)や肺外結核などの結核菌感染症、感染性心内膜炎、EBウイルスサイトメガロウイルス感染症、そして肝臓や骨盤内の膿瘍(のうよう)などが重要です。また近年HIV感染症が不明熱の原因として発見されることもあります。悪性腫瘍では、ホジキン病を含む悪性リンパ腫ほか腎細胞がん大腸がん、肝細胞がんなどが不明熱の原因となることがあります。膠原病のなかでは成人型スティル病、血管炎症候群などがあります。そのほか、クローン病などの炎症性腸疾患、サルコイドーシスなどの肉芽種(にくげしゅ)性疾患、薬剤熱、血腫内分泌疾患などが原因となることがあります。

 不明熱の原因検索には、一般的な病歴聴取に加えて生活歴や旅行歴、薬剤内服歴などの詳細な問診のほか、ていねいな診察画像検査血清検査を含む臨床検査が重要になります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「不明熱」の意味・わかりやすい解説

不明熱
ふめいねつ
fever of unknown origin

原因不明の発熱で、FUOと略称される。発熱が3週間以上にわたり、また38.3℃以上に達する数度の高熱がみられ、1週間の入院精密検査によっても原因や侵されている臓器手掛りが得られない場合に不明熱とされる。したがって、原因の明確な熱性疾患、経過の短い良性のウイルス性疾患、微熱が持続する本態性高体温症、手術後の発熱などは除外される。

 不明熱の多くは比較的ありふれた疾患の非定型的な症状であり、結核をはじめ、肝臓や胆道の感染症、サルモネラ症、腹腔(ふくくう)深部膿瘍(のうよう)など感染症の場合にもっとも多くみられ、悪性リンパ腫(しゅ)や白血病などの悪性腫瘍およびリウマチ熱や関節リウマチなどの膠原(こうげん)病がこれに次ぎ、そのほかアレルギーや亜急性甲状腺(せん)炎などの場合にもみられる。したがって、精力的な原因追求が望まれる。なかには、診断不明のままに経過するうち、治癒してしまうといった予後のよいものもある。

[柳下徳雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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