且且(読み)かつがつ

精選版 日本国語大辞典 「且且」の意味・読み・例文・類語

かつ‐がつ【且且】

〘副〙 (耐える意の動詞「かつ」の終止形を重ねたものか。→かつかつ〔副〕)
① ある事態が不十分ながら成り立つことを表わす語。どうにかこうにか。まあ、ともかくも。わずかに。やっと。
古事記(712)中・歌謡「加都賀都(カツガツ)も 最(いや)(さき)立てる 兄(え)をし枕(ま)かむ」
其面影(1906)〈二葉亭四迷〉二一「最初はかつがつ家計を維持するに足りた報酬が段々足りなくなる」
② ある事態を不十分ながらもすばやく成り立たせる時の、とり急いだ気持を表わす語。とりあえず。急いで。
蜻蛉(974頃)中「ささして、まゐり給ことあなり。かつがつまゐりて、とどめきこえよ。ただ今わたらせ給ふ」
※大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)二「二三日ありて当に還るべし、師且(カツカツ)衙所に向ひたまへ」
③ 待っていた状態がようやく到来したことを表わす語。早くも。今からもう。
六百番歌合(1193頃)夏下・七番「夕ま暮ならす扇の風にこそかつがつ秋は立ちはじめけれ〈源信定〉」
※日蓮遺文‐持妙法華問答鈔(1263)「悲母深重の経文心安ければ、唯我一人の御苦みもかつかつやすみ給らん」
④ ある事態が、他の事態に並行して、それを補助する形で成り立つことを表わす語。それにまた。加えてまた。あわせて。
源氏(1001‐14頃)若菜下「残りの命うしろめたくて、かつかつ物ゆかしがりて、慕ひまゐり給ふなりけり」
東関紀行(1242頃)柏原より株瀬川「しばしば幽吟を中秋三五夜の月にいたましめ、かつかつ遠情を先途一千里の雲におくる」
⑤ ある事態が、時間の経過に伴って量的に充実の度を加えることを表わす語。おいおいに。だんだん。次第に。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「住吉御願かつかつはたし給はむとて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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