日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界ウイグル会議」の意味・わかりやすい解説
世界ウイグル会議
せかいういぐるかいぎ
World Uyghur Congress
東トルキスタン(中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区)内外のウイグル人の集団的利害を代表する国際組織。略称WUC。亡命したウイグル人らで構成する「東トルキスタン民族会議」と「世界ウイグル青年会議」が2004年に合流してつくられた、ウイグル人組織を統括する上部機関である。2018年時点で約28の加盟組織があり、ドイツのミュンヘンに本部を置く。
初代議長は、在外ウイグル人でラジオ・フリー・ヨーロッパ元職員のアルプテキンErkin Alptekin(1939― )が務めた。ウイグル人を代表する著名人で、中国政府に政治犯として6年間投獄された経験をもつカーディルが2006年に第2代議長に選出されると、国際社会における影響力は一気に高まった。
中国当局による新疆ウイグル自治区における人権迫害を批判し、亡命ウイグル人の支援などを行っている。一方で、新疆ウイグル地域の中国からの独立を求めるほかのウイグル人団体とは一線を画し、「ウイグル民族の民族自決権の確立」を主張。「高度な自治」が容認されれば、同地域が中国内に留まる可能性についても含みを残している。しかし、中国政府は同会議を「反中分裂組織」とし、カーディルを「暴力恐怖分子」(テロリスト)と批判し、同会議が呼びかける対話を拒否している。
[矢板明夫 2019年4月16日]