丹つらう(読み)につらう

精選版 日本国語大辞典 「丹つらう」の意味・読み・例文・類語

に‐つら・う ‥つらふ【丹つらう】

〘自ハ四〙 (後世は「にづらう」とも) 赤く照りはえる。特に、顔が紅色にそまって美しい色をしている。さにつらう。
万葉(8C後)一〇・一九八六「吾れのみやかく恋すらむかきつはた丹頬合(につらふ)妹は如何にかあるらむ」
[語誌](1)「ニ」は赤く美しい色、「ツラ」は頬の意で、「フ」は動詞化する接尾語。赤い頬をしている、が原義。それが紅顔の意や容貌の美しさを意味するようになり、接頭語「さ」の付いた「さにつらふ」は「君」「妹」から広がって「もみじ」「紐(ひも)」「色」などにもかかるようになったとするのが従来の通説
(2)これに対して、枕詞「さにつらふ」のかかる語からすると、紅顔の意とは隔たりが大きいため解釈上無理があるとし、類義の「丹着かふ」との関係が、「へつらふ(諂)」と「へつかふ(辺付)」の関係と類似しているところから、「ツラフ」は「連らふ」で、「ニツラフ」は「丹連らふ」ではないかとする説もある。

さに‐つらう ‥つらふ【丹つらう】

連語〙 (後世「さにづらう」とも) 赤く照り輝いて美しいの意。「色」「君」「我が大君」「妹」「紐」「紅葉(もみじ)」を形容することばとして用いられる。「つらう」は、一説に、「移らふ」の意とする。
※万葉(8C後)一六・三八一一「左耳通良布(サニツラフ) 君が御言玉梓(たまづさ)の 使も来ねば」
[語誌]「万葉集」に九例あるが、すべて連体修飾語として用いられており、枕詞とする説もある。中古、中世には用例がほとんど見られないが、近世に至って国学者達によって再び用いられるようになる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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