大学事典 「主専攻・副専攻」の解説
主専攻・副専攻
しゅせんこう・ふくせんこう
大学・大学院の卒業修了要件の一部として,大きな単位数と小さな単位数の二つの専攻分野の履修を求める制度。19世紀,アメリカ合衆国の多くのカレッジでは,学士号の取得に必要な履修科目は固定されていた。啓蒙思想・専門研究主義の浸透,一部の大学の大規模化の結果,科目選択の自由が始まり,19世紀末のハーヴァードでは1,2を除き必修科目は消滅した。完全な選択制による極端な帰結を回避するため,20世紀前半には学生が卒業までに一定の分野の基礎と上級科目とをまとめて履修する制度が導入された。それに伴い,主専攻以外の分野を選択し履修する方法が標準化し,科目の集中と履修の自由とのバランスが回復された。主専攻・副専攻が物理学とコンピュータ科学ならば就職にも有利であり,ドイツ文学と音楽なら趣味を学的に深めうる。大学院では新たな研究主題の模索を促進すると同時に,学位取得後,教員として隣接分野の科目を担当する準備にもつながる。日本では,一般に専攻分野の数が多い国立大学が,部分的にせよ高い割合で導入しているが,全学的に実施しているのは新潟大学,埼玉大学,広島大学等の数校に過ぎない。
著者: 立川明
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報