乳酸アシドーシス

内科学 第10版 「乳酸アシドーシス」の解説

乳酸アシドーシス(糖尿病昏睡)

(4)乳酸アシドーシス
病態
 循環不全による典型的な乳酸アシドーシス(lactic acidosis:LA)をタイプAとよぶ.ビグアナイド剤などの薬剤,あるいは糖尿病,肝疾患,敗血症など,ほかの疾患に続発性に起こるものをタイプBとよんでいる.糖尿病に合併する乳酸アシドーシスはビグアナイド剤の副作用,もしくは糖尿病ケトアシドーシスと合併したものがほとんどである.高齢者に起こりやすく,ショックなどの循環不全,肺炎などによる呼吸不全,肝腎不全を合併した際に頻度が高い.検査所見の特徴は,①血中乳酸値の増加(5 mEq/L以上),②乳酸/ピルビン酸比の増加,③アニオンギャップの上昇を伴ったほかの原因(たとえば,糖尿病ケトアシドーシス,腎不全など)のないアシドーシス(<pH7.35)があり,尿ケトン体は陰性のことが多く,血糖値は200 mg/dL前後とあまり高血糖を示さないことが多い.
治療
 乳酸アシドーシスを疑った場合,ビグアナイド剤を内服中の症例では,直ちにこれを中止し,循環状態の改善をはかる.血液pHが7.2未満の際には,心拍出量の低下,肝腎血液量の低下を増悪させ,さらにアシドーシスが進行する.このような場合には炭酸水素ナトリウム投与により,アシドーシスの補正を行う.炭酸水素ナトリウムは持続静注し,pHと炭酸水素濃度を経時的に測定し,それぞれpH 7.2以上,12 mEq/Lまで補正する.炭酸水素ナトリウム治療の副作用は高ナトリウム血症,高浸透圧血症である. 原病に対する治療を必ず併用する.
予後
 高齢者に起こった際には予後はきわめて不良である.[小林哲郎]
■文献
小林哲郎:糖尿病の緊急処置.臨床糖尿病マニュアル.第3版.pp45-68,南江堂,2012.
Tanaka S, Kobayashi T, et al: Paradoxical glucose infusion for hypernatraemia in diabetic hyperglycaemic hyperosmolar syndrome. J Intern Med, 248: 166-168, 2000.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の乳酸アシドーシスの言及

【糖尿病】より

…急性代謝異常の極は昏睡であり,四つの型がある。すなわち,(1)糖尿病性ケトアシドーシス,(2)高浸透圧性非ケトン性昏睡,(3)乳酸アシドーシス,および(4)医原性の低血糖である。 糖尿病性ケトアシドーシスは極度のインシュリン不足の結果で,血中グルコースおよびケトン体の蓄積過剰を特徴とする。…

※「乳酸アシドーシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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