炭酸水素ナトリウム(読み)タンサンスイソナトリウム(その他表記)sodium hydrogencarbonate

デジタル大辞泉 「炭酸水素ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

たんさんすいそ‐ナトリウム【炭酸水素ナトリウム】

炭酸の一水素ナトリウム塩。白色の微細な結晶。加熱すると二酸化炭素を発生して炭酸ナトリウムとなる。水溶液は弱アルカリ性医薬品消火剤などに利用化学式NaHCO3 重炭酸ナトリウム重炭酸ソーダ重曹酸性炭酸ナトリウム

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精選版 日本国語大辞典 「炭酸水素ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

たんさんすいそ‐ナトリウム【炭酸水素ナトリウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( ナトリウムは[ドイツ語] Natrium ) ナトリウムの炭酸水素塩。化学式 NaHCO3 白色で、単斜晶系の微細な結晶。アンモニアソーダ法による炭酸ナトリウム製造の中間生成物として得られる。水に溶け、アルコールには溶けない。ナトリウム塩の製造原料、二酸化炭素の発生用、ベーキングパウダー、粉せっけん、医薬品などに用いられる。重炭酸ナトリウム。重炭酸ソーダ。重曹(じゅうそう)。酸性炭酸ナトリウム。

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改訂新版 世界大百科事典 「炭酸水素ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸水素ナトリウム (たんさんすいそナトリウム)
sodium hydrogencarbonate

この名称に相当する塩には一水素塩NaHCO3と二炭酸一水素塩Na2CO3・NaHCO3・2H2Oとが知られており,単に炭酸水素ナトリウムというときは前者をさす。後者はその組成Na3(CO3)(HCO3)・2H2O(NaとCO3のモル比 3:2)からセスキ炭酸ナトリウムsodium sesquicarbonate(sesqui-は11/2を表す接頭語)と俗称されることもある。

化学式NaHCO3。酸性炭酸ナトリウムともいう。Na 1 mol当りの発生CO2の量が正塩Na2CO3の2倍であることから,重炭酸ナトリウム,重炭酸ソーダsodium bicarbonate(重曹(じゆうそう)と略称)などの俗称もある。天然にはナーコ石nahcolite(成分元素からのNaHCO-liteに由来)として産出する。独特の弱い辛味を有する無色単斜晶系の微細結晶。結晶中には水素結合による(HCO3⁻)∞の鎖が存在し,鎖中のO-H…Oの結合の長さは2.595Å。比重2.20。屈折率1.526。水100gへの溶解度6.9g(0℃),8.8g(15℃),16.4g(60℃)。エチルアルコールに不溶。熱すると二酸化炭素と水を放って分解し,270℃以上で無水炭酸ナトリウムになる。

 2NaHCO3─→Na2CO3+CO2+H2O

水溶液は加水分解して微アルカリ性(指示薬メチルオレンジ,リトマスに対してアルカリ性,フェノールフタレインに対して中性)を示す。

 NaHCO3+H2O⇄H2CO3+NaOH

水溶液を加熱すると65℃以上で二酸化炭素を放って分解する。

 工業的には炭酸ナトリウムの含水塩に二酸化炭素を通じてつくる。純粋な製品を得るには,純粋な炭酸ナトリウムの飽和水溶液に二酸化炭素を通じて結晶を析出させ,ろ(濾)別後,二酸化炭素気流中で乾燥する。また,アンモニアソーダ法による炭酸ナトリウム製造の中間生成物として大量につくられるが,不純物として塩化ナトリウム,塩化アンモニウムの少量を伴うので,65℃以下で水溶液から再結晶精製する(〈炭酸ナトリウム〉の項参照)。ナトリウム塩の製造,高純度二酸化炭素の発生剤,ベーキングパウダー,絹や羊毛の洗浄剤となる。医薬品としては内服用,主として制酸剤とされる。また種々の薬物の使用のさいに,胃障害を防ぐ目的などで併用される。

化学式Na2CO3・NaHCO3・2H2O。天然にはトロナtronaとしてアフリカおよびアメリカのソーダ泉,ソーダ湖中に堆積して大量に産出する。重要な天然ソーダで,古代エジプト人がガラスやセッケンの製造に用いたといわれる。天然のものは無色,灰色ないし黄色の単斜晶系柱状晶,合成したものは無色針状の結晶性粉末。比重2.112。屈折率1.5073。水100gへの溶解度13g(0℃),42g(100℃)。NaHCO3とNa2CO3を等mol含む水溶液から35℃以上で結晶として得られる。炭酸ナトリウムより風解しにくく,アルカリ性が弱いため,羊毛,毛織物の洗濯に使用される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭酸水素ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸水素ナトリウム
たんさんすいそなとりうむ
sodium hydrogen carbonate

炭酸の一水素ナトリウム塩。化学式NaHCO3、式量84.0。酸性炭酸ナトリウムともいう。Na1モル当りの発生CO2が正塩である炭酸ナトリウムの2倍なので、俗に重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダ、重曹などともいうが正しい名称ではない。炭酸ナトリウムの飽和水溶液に二酸化炭素を吸収させると沈殿となって析出する。工業的にはアンモニアソーダ法による生成物を温水から再結晶して製造する。無色の単斜晶系の粉末。加熱により270℃以上では分解して炭酸ナトリウムとなる。

 2NaHCO3→Na2CO3+CO2+H2O
 15℃の水100グラムに8.8グラム溶けるがアルコールには溶けない。水溶液は加水分解のため弱アルカリ性を示す。

 ナトリウム塩の製造原料や、二酸化炭素を放出する性質を利用してベーキングパウダー、洗浄剤などに用いられる。また内服薬として制酸剤、アルカリ剤などに用いられる。

[鳥居泰男]


炭酸水素ナトリウム(データノート)
たんさんすいそなとりうむでーたのーと

炭酸水素ナトリウム
  NaHCO3
 式量  84.0
 融点  ―
 沸点  ―
 比重  2.20
 結晶系 単斜
 屈折率 (n) 1.526
 溶解度 6.9g/100g(水0℃)
     16.4g/100g(水60℃)

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化学辞典 第2版 「炭酸水素ナトリウム」の解説

炭酸水素ナトリウム
タンサンスイソナトリウム
sodium hydrogencarbonate

NaHCO3(84.01).重曹,酸性炭酸ナトリウム,重炭酸ナトリウムともいう.炭酸ナトリウムの飽和水溶液に二酸化炭素を通じると得られる.白色の単斜晶系結晶.密度2.159 g cm-3.水100 g に対する溶解度は6.9 g(0 ℃),16.4 g(60 ℃).エタノールに難溶.熱すれば二酸化炭素と水を放って分解し,270 ℃ 以上では炭酸ナトリウム無水物となる(二酸化炭素の実験室的製法,および純炭酸ナトリウムの製法).水溶液は加水分解して微アルカリ性を示し,水溶液を65 ℃ 以上に熱すると炭酸ナトリウムになる.ナトリウム塩の製造,二酸化炭素の発生,消火器,ベーキングパウダー,炭酸飲料水の製造,洗濯用粉せっけん,バターの防腐剤,木材の防かび剤,医薬品,分析試薬などに用いられる.ほかにセスキ炭酸ナトリウムともよばれるNaCO3・NaHCO3・2H2Oもある.これは天然ソーダである.白色の単斜晶系結晶で,炭酸ナトリウムよりアルカリ性が弱く,羊毛,毛織物の洗濯に用いられる.[CAS 144-55-8]

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百科事典マイペディア 「炭酸水素ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸水素ナトリウム【たんさんすいそナトリウム】

化学式はNaHCO3。比重2.20。水に溶ける無色の結晶。俗に重炭酸ソーダ,重曹とも。約300℃で水と二酸化炭素を放って無水炭酸ナトリウムとなる。水溶液は微アルカリ性で,65℃以上で分解して盛んに二酸化炭素を発生する。ベーキングパウダー,医薬品(制酸剤),消火剤などに使用。工業的には炭酸ナトリウム製造の中間生成物として得られる。
→関連項目発泡剤

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炭酸水素ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸水素ナトリウム
たんさんすいそナトリウム
sodium hydrogen carbonate

化学式 NaHCO3 。重曹,重炭酸ソーダ,重炭酸ナトリウムとも俗称される。無色透明の結晶あるいは白色塊状または粉末状物質。熱すると約 300℃以上で分解し,炭酸ナトリウムに変る。水に可溶,アルコールに難溶。水溶液は微アルカリ性を呈する。アンモニアソーダ法で炭酸ナトリウムを製造するときの中間体として重要である。

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栄養・生化学辞典 「炭酸水素ナトリウム」の解説

炭酸水素ナトリウム

 重炭酸ナトリウム,重炭酸ソーダ,酸性炭酸ナトリウム,重曹ともいう.ベーキングパウダーや制酸剤として使われる.

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世界大百科事典(旧版)内の炭酸水素ナトリウムの言及

【制酸薬】より

…制酸薬はその作用機序から吸収性制酸薬と局所性制酸薬に分類される。
[吸収性制酸薬]
 炭酸水素ナトリウム,クエン酸ナトリウム,酢酸ナトリウムなどがこれに属する。これらのアルカリ剤は,速効性であるが,胃酸を中和後に吸収されて血液のアルカリ予備を増大し,過量ではアルカロージスを起こす。…

※「炭酸水素ナトリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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