二見郷(読み)ふたみごう

日本歴史地名大系 「二見郷」の解説

二見郷
ふたみごう

和銅二年(七〇九)一〇月二五日の弘福寺田畠流記帳(円満寺文書)に「大倭国(中略)内郡二見村陸田陸段」とある。「和名抄」にはみえないが、仁安三年(一一六八)豊井庄新苧注進状(東大寺文書)に「豊井御庄内二見坂合部春料苧不食分中分食□合参拾為(中略)二見郷九為」、同四年の二見坂合部郷預所給田畠注文(東京大学蔵東大寺文書)に「二見郷田畠一町」とある。もと豊井とよい庄のうちにあり、文書所有からみて、平安期にはおそらく東大寺領(東大寺文書)、鎌倉期以降は興福寺一乗院領(簡要類聚鈔)と考えられる(→豊井庄。所在は郷名からみると、現五條市二見に比定される。

嘉応元年(一一六九)の二見郷指上日記案(東大寺文書)に「合五石三斗三升者、御倉町一石宗頼 杜内四斗宗頼 常陸殿一石一斗五升 助貞三升 行末一斗 定覚二斗 力寿二升 久永五升 文智三斗 助貞三斗(以下二〇筆略) 出納行末 出納是守 公文定覚 公文文智 御庄司宗頼」とある。


二見郷
ふたみごう

「和名抄」高山寺本・東急本ともに「布多美」の訓を付す。「倭姫命世記」垂仁天皇二五年三月条に「然而二見浜御船坐、于時大若子命、国名何問給、答白速両二見はやふたたひみたまふ 国」と地名説話を記す。「太神宮諸雑事記」長暦三年(一〇三九)二月一五日条には「第九伊介二見郷々調塩二百十斤不弁済事」とあり、大神宮禰宜などが上京して訴えている。「神宮雑例集」には烟別所当済例祭料一石八斗を負担し、ほかに遷宮時の鎮地祭物として塩三斤を出す。「外宮神領目録」には諸郷祭料として「一石二見郷此外御塩四石」、「神鳳鈔」には「二見郷」「二宮二見御厨」がみえる。郷内の地名は「西村」「庄村」「三津」(太田文書)、「六条二見里」「六条栗栖里」「難田里」「塩合御薗」(御塩殿文書)、「浜大浦」「中松原御園」「堅田里」「江」(光明寺古文書)などがみえる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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