普及版 字通 「亟」の読み・字形・画数・意味
亟
8画
[字訓] ころす・きみ・すみやか・しばしば
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
二+人+口+(又)。二は上下の間の狭い空間。ここに人をおしこめ、前に自己詛盟を示す祝の器((さい))をおき、後ろから手でおしこむ。人を極所に陥れて罰する方法を示す。これによって殺すことを、その場所を極という。罪によって殺すことを原義とし、極所・究極の意よりして君位をいう。また棘(きよく)に仮借して急棘、すみやかの意となる。〔詩、大雅、文王有声〕「其の欲を亟(すみ)やかにするに匪(あら)ず」の亟を、棘に作るテキストがある。〔説文〕十三下「疾なり」はその仮借義。また〔伝〕に「天の時を承け、地の利に因り、口もて之れを謀り、手もて之れを執る。時は失ふべからず。疾きなり」と字形を説くが、曲説に近い。亟は・極の初文。その殺の法を示す。放の刑をもまた亟(極)といった。金文の〔毛公鼎〕に「女(なんぢ)に命じて一方に亟(きみ)たらしむ」、〔晋姜鼎〕「乍(すなは)ち(とど)まりて亟と爲らん。年無疆ならんことを」のような用法がある。亟を君の義に用いることは文献に例をみないが、金文にみえて最も古い用義。〔詩、周頌、思文〕「我が烝民を立(粒)するは 爾(なんぢ)の極に匪(あら)ざる(な)し」の極は、おそらく君の意であろう。
[訓義]
1. ころす。の初文。
2. 窮極、窮極にあるもの、きみ。
3. 棘と通じ、すみやか。
4. しばしば。その義の音はキ。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕亟 志波之(波)(しばしば) 〔名義抄〕亟 スミヤカニ・ツヒニ・シバシバ 〔字鏡集〕亟 スミヤカニ・スミヤカナリ・シバシバ・シバシ・カズ・ツヒニ・スケ・トシ・モロ
[声系]
〔説文〕に亟声として・極・などを収める。は〔説文〕十下に「疾なり」とあり、急疾をいう。・極は亟の声義を承け、亟をその初文とみることができる。
[語系]
亟・・kik、極gikは声義近く、同系の語。棘kik、窮giumも窮極・急疾の義において通ずる。
[熟語]
亟見▶・亟肄▶・亟絶▶・亟拝▶・亟用▶・亟淹▶・亟近▶・亟行▶・亟疾▶・亟心▶・亟速▶・亟務▶
[下接語]
亟・遽亟・困亟・精亟
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報