日本大百科全書(ニッポニカ) 「人さらい」の意味・わかりやすい解説
人さらい
ひとさらい
日暮れどきに出現して幼児をさらって行くといわれていた妖怪(ようかい)。夕暮れまで戸外に遊んでいる子供を戒めるのに昔はよく使われた。コトリゾ、カクレババ、フクロカツギ、アブラトリ、カクシンボなどともいい、こうした妖魔が現れて幼児をさらって行くと思念され、タソガレ、マクマクドキなどともいう薄暮には、とくに幼童が襲われると久しく信じられてもいたのである。室町時代の『臥雲(がうん)日件録』などには、「子取尼」なるものが京都に現れて人々を驚かせたという記事も載っている。しかし「ヒトサライ」は、むしろ薄暮に跳梁(ちょうりょう)すると信じられてきた俗信の所産で、「神隠し」の伝承とも相通ずるところであろう。とはいえ、古くから実際に幼児を誘拐して利をむさぼる悪党がなかったわけではない。
[竹内利美]
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