付回(読み)つけまわし

精選版 日本国語大辞典 「付回」の意味・読み・例文・類語

つけ‐まわし ‥まはし【付回】

〘名〙
① 付け回すこと。しつこく跡を追うこと。どこまでも付けて行くこと。
② 江戸後期、吉原遊女階級の一つ。昼三(ちゅうさん)の次位にあたり、将来の昼三と目される若い妓。そのため揚げ代二分であっても、三分の遊女と同じぐらい客は支払わされた。
随筆・吉原大全(1768)二「又付廻しといふ事、近き世よりはじまりて昼見せひけても、あんどうを出さざれば、昼夜の分、火をともせば片じまひとなるなり」
歌舞伎で、二人または二人以上の人物が、互いに向き合ったまま、じりじりと半円をえがいて、その位置が入れかわること。はりつめた心情を伝える演出。
※歌舞伎・櫓太鼓鳴音吉原(1866)五幕「薄雲ぞっとせしこなしにて、うっとりと十三に見惚れる。十三二重(ぢう)へ上り、附廻(ツケマハ)しに十三上手に住ふ」
④ 自分のつけを他の人に支払わせるようにすること。
新西洋事情(1975)〈深田祐介日本「業者思想」欧州に死す「また得意先きで例のつけまわしという奴、飲み屋の請求書をふぐの腹みたいに詰めこんだ、大型茶封筒を『はい、お土産』と渡されたりしても」

つけ‐まわ・す ‥まはす【付回】

〘他サ五(四)〙
① どこまでも跡を追って行く。しつこく跡を追い回す。
浄瑠璃津国女夫池(1721)千畳敷間夫(まぶ)を切らるる乗り換への女郎の恨みの、夜々を重ねて附廻したる恐ろし」
婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「怪むべき風体の奴だから、其筋の係が、其奴を附廻(ツケマハ)して」
② 廻送する。
醍醐寺文書‐応永二七年(1420)九月一九日・僧正持円書状「もし令之旨候者、付廻可給候」

つけ‐まわ・る ‥まはる【付回】

〘自ラ五(四)〙 いつも付き添っていて離れない。しつこくつきまとう。
灰燼(1911‐12)〈森鴎外一四「女の跡を附け廻る。狗のやうだと嘲りたくなる」

つき‐まわ・る ‥まはる【付回】

〘自ラ四〙 そばに付いてあちこちへ動き回る。
史記抄(1477)七「さりとては高祖の微なっしときよりつきまわりて、ちっともはなれられぬ人ぞ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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