内科学 第10版 の解説
体位変換試験:起立血圧試験(自律神経系の機能検査法)
起立性低血圧があるかどうかをみる試験で,体位変換により圧受容器反射機能の障害を推定する簡便な試験である.head-up tilt test(HUT)は被験者をティルトテーブルにより,60~80度ティルトする.臥位で10分間安静を保たせた後,臥位,受動的な立位(60~90度)直後,1分,2分,3分後,可能であれば10分後までの血圧,脈拍の変動をみる.交感神経系活動による末梢血管収縮,心副交感神経活動抑制と交感神経活動促進により,正常者では10~20拍/分の反応性脈拍増加(正常では30拍/分以上)がみられ,収縮期・拡張期血圧は10 mmHg以内の変動にとどまる.異常値の基準には報告によって幅があり収縮期血圧20~30 mmHg以上,拡張期10~20 mmHg以上の血圧低下が異常とされ,特に反応性脈拍増加を伴わない場合は重症であると推定される.さらに,カテコールアミン,バソプレシン(ADH)の採血を追加することにより詳細な検査が可能である.簡易な能動的(被験者自身)の体位変換による検査はtilt-up test,Schellong testとよばれる. また,起立後30心拍目と15心拍目の心電図R-R間隔を計測しその比を30:15 比として算出することも行われ,迷走神経副交感神経系の障害を検出する(図15-4-23.正常>1.05).これで失神が再現されたときには,有力かつ最大の証拠となる.[平田幸一]
■文献
Longo D, Fauci A, et al eds: Harrison’s Principles of Internal Medicine, 18th ed, McGraw-Hill, New York, 2011.
Low PA, Benarroch EE, eds: Clinical Autonomic Disorders. 3rd ed, Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 2008.
日本自律神経学会編:自律神経機能検査法,第4版,文光堂,東京,2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報