検査などの目的で血管から血液を採取すること。どの血管から採血するのかにより「毛細血管採血」「動脈血採血」「静脈血採血」がある。
〔1〕毛細血管採血
毛細血管採血は、毛細血管が豊富な指先や耳たぶなどを穿刺(せんし)し、にじみ出た血液を採取する方法であり、新生児や乳児の採血や簡易血糖測定に用いられる。採血は本来、医師・看護師・臨床検査技師の三医療職のみが実施できる行為であるが、糖尿病で定期的な血糖測定が必要な患者自身が、指先からの毛細血管採血で簡易血糖測定を行うことは可能である。
〔2〕動脈血採血
動脈血採血は、おもに呼吸状態を評価するための血液ガス分析を目的に行われるものである。動脈血採血は他の採血より危険度が高いため、原則医師が実施する。
〔3〕静脈血採血
医療機関や健康診断時に一般的に行われるのが静脈血採血であり、単に「採血」といった場合にはこの静脈血採血をさすことが多い。医師または看護師、臨床検査技師によって実施される。
静脈血採血は、採取した血液成分を分析し、疾患の診断や病状の把握、治療の効果などを判断する目的のほか、血液型を調べたり、輸血用血液を採取する(献血時の採血)目的でも行われる。
採血量は検査数により異なり、検査項目が多ければ必要血液量も多くなる。
〔4〕採血に伴う合併症
採血は侵襲(痛みや苦痛)を伴う手技であり、実施に際しては合併症が起こる可能性がある。採血に伴うおもな合併症としては、皮下血腫(けっしゅ)、血管迷走神経反応、神経損傷、アレルギーがある。
(1)皮下血腫
皮下血腫は、針を抜いた後に適切な止血を行わないことや、採血部位をもむ行為により血管壁から皮下へ血液が漏れ出すことにより起こるもので、採血の合併症としてもっとも多い。とくに脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞予防のために抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬剤)を使用している患者の場合に起こりやすい。皮下血腫予防のためには、針を抜いた後に適切な圧迫止血を行うことが必要であり、また、採血後、すぐに採血側の腕で重い荷物などを持つことは避けるほうがよい。
(2)血管迷走神経反応
血管迷走神経反応は、採血時に冷感や悪心(おしん)(吐き気)、気分不快、動悸(どうき)などの症状が現れるものである。採血に対する過度の緊張や不安により迷走神経が刺激され、血圧低下や脈拍数減少(徐脈)が起こることで脳への酸素供給が低下することによる症状と考えられている。症状が悪化すると失神する場合もあるため、これらの症状がみられたらすぐに採血を中止し、あおむけに寝かせる必要がある。また血管迷走神経反応の予防のため、医療者は採血前に声をかけ、不安や緊張をやわらげるよう配慮する。
(3)神経損傷
神経損傷は、採血時に血管付近の神経を誤って刺すことにより起こるものであり、神経損傷防止のための安全な静脈採血部位として、しばしば肘(ひじ)の静脈(肘正中皮静脈など)が選ばれる。また、針を刺したらすぐに、しびれや痛み(神経損傷時のびりっとした痛み)の有無を確認してから採血が行われる。
(4)アレルギー
採血時には採血部位のアルコール消毒を行うが、アルコールによるアレルギーがある場合は、ポビドンヨードやクロルヘキシジンなど、他の消毒薬にかえて実施する。また、医療者は採血の際、手袋を着用して実施するが、手袋の素材(ラテックス)に対するアレルギーもありうるため、採血前にはアレルギーの有無について確認がなされる。
〔5〕針刺し事故
採血する側(医療者側)に起こりうる医療事故として、患者に使用した針を誤って自分に刺してしまう針刺し事故がある。その患者に感染症がある場合には血液曝露(ばくろ)による医療者への感染の危険があるため、採血実施時の手袋の着用、針を抜いた後はキャップをつけず速やかに専用容器に針を捨てる等の対策が実施されている。
[横山美樹 2022年9月21日]
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