失神(読み)シッシン

デジタル大辞泉 「失神」の意味・読み・例文・類語

しっ‐しん【失神/失心】

[名](スル)意識を失うこと。多くは、強い精神的ショックや肉体的打撃、あるいは脳貧血などによって起こる。気絶。「恐怖のあまり―する」
[類語]悶絶気絶人事不省喪心無意識前後不覚心神喪失昏睡気が遠くなる目を回す気を失う

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六訂版 家庭医学大全科 「失神」の解説

失神
(循環器の病気)

 失神を来す心臓の病気には、徐脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)頻脈性(ひんみゃくせい)不整脈などの不整脈が原因のものと、神経調節性失神起立性低血圧などの一過性血圧低下が原因のものとがあります。心臓の病気以外で失神を来す病気には、脳梗塞(のうこうそく)てんかんなどの脳の病気、精尿病、肝不全、精神病などがあります。

アダムス・ストークス症候群

 徐脈性不整脈頻脈性不整脈などの不整脈が原因で失神を起こす病気をアダムス・ストークス症候群といいます。徐脈性不整脈の場合、徐脈の原因になる薬剤があれば中止し、それでも症状がなくならない場合や高度の徐脈がある場合には、人工ペースメーカー植込術を行います。

 失神を伴う頻脈性不整脈は重症の不整脈なので、専門の病院で心臓電気生理学検査を行い、適切な抗不整脈薬、高周波カテーテル・アブレーション植込型除細動器などの方法を組み合わせて積極的な治療を行います。

神経調節性失神

 いろいろな場面で生じる自律神経時反射により引き起こされる一過性の血圧低下をいいます。血圧低下が主体のタイプと、血圧低下に加えて徐脈も生じるタイプ、さらには血圧低下よりもむしろ徐脈が主体のタイプとがあります。神経調節性失神には、血管迷走神経(けっかんめいそうしんけい)失神、情動(じょうどう)失神、頸動脈洞過敏(けいどうみゃくどうかびん)失神、状況失神((せき)、排尿、排便、運動、嚥下(えんげ)失神など)が含まれます。

 診断には、失神が生じた時の状況を詳細に調べることが参考になります。確定診断には傾斜試験が有用です。これは60~80度の傾斜台に寝て、30~120分間、血圧と脈拍を観察する検査です。神経調節失神の場合、失神あるいは気分の不快を伴う血圧低下が誘発されます。

 ほとんどの場合、生活指導(不規則な睡眠・食生活の是正、アルコールの飲みすぎの禁止)失神を引き起こす状況を避ける、などの注意で予防できます。しかし、なかには失神発作を繰り返し、薬物の内服や特殊な人工ペースメーカーが必要になる患者さんもいます。

起立性低血圧

 立位時に血圧低下を来す病気です。血圧の低下の程度が軽い場合はめまい、立ちくらみ症状が現れ、低下が高度であれば失神を来します。高血圧の薬や血管を広げる薬が原因になる場合もあります。

 血圧低下の程度が高度であったり持続時間が長い場合、また進行性にひどくなる場合などは、神経系の病気が基礎にあることがあります。

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改訂新版 世界大百科事典 「失神」の意味・わかりやすい解説

失神 (しっしん)
syncope

一般には脳貧血ともよばれ,脳の循環障害により一時的に血流が低下することによって起こる短時間かつ一過性の意識消失をいい,通常,器質的病変を伴わない。発症は急激ではあるが,意識を失うまでには2,3秒を要することが多く,四肢冷感,発汗,霧視などの前兆を伴うこともある。したがって突発的に転倒することはなく,しゃがみ込んだり,横になることが可能なこともある。患者は冷たくかつ柔らかで,呼吸はため息様,脈は遅くかつ弱い。ときに尿失禁またまれには痙攣(けいれん)を伴うこともある。発症機序は,脳血管の狭窄を除けば,心拍出量の低下であり,表のような種々の原因が知られる。

 失神そのものは,横になったり,頭を下げてしゃがむことでおさまるが,不整脈等の器質的疾患のある場合はその治療が必要であり,まず原因の精査,鑑別が重要である。起立性低血圧では,下肢や腹部に弾性包帯をしたり昇圧薬やステロイド薬を用いる。頸動脈洞性失神にはアトロピンが用いられるが,効果のみられない場合には頸動脈洞の除神経も行われる。
気絶
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内科学 第10版 「失神」の解説

失神(症候学)

 失神は脳の血流低下による一過性の意識消失発作であり,脳血流低下の原因は多岐にわたる.意識を失う直前に眼の前が暗くなったり,冷や汗をかいたり,血の気が引く感じがしたり,人の声が小さく聞こえたり,気分不快,悪心などを自覚することがある.これらは,いずれも血圧の低下に関連した前駆症状である.これらの前駆症状に続いて短時間の意識消失をきたす.失神時に転倒すると,受け身の姿勢がとれず,大けがをすることもある.「気がついたら,床のうえにいた」と感じることが多い.最も多いのは,心血管性失神の中の反射性失神で,その代表は,血管迷走神経失神である. 失神は一般に心血管性と非心血管性に大別される(表2-47-1).心血管性失神は①反射性失神(神経調節性失神)②起立性低血圧による失神③心原性失神に大別される.また,非心血管性失神は①脳血管性失神②代謝性失神③心因性失神に大別される.反射性失神と起立性低血圧においては,失神発作と自律神経の関係が特に注目される【⇨15-3-3)】.[荒木信夫]

失神(おもな神経症候)

 失神は脳血流低下による一過性の意識消失発作であり,その原因は多岐にわたるが,一般に心血管性と非心血管性に大別される(表15-3-4)(荒木,2002).心血管性失神は,①反射性失神,②起立性低血圧による失神,③心原性失神に大別される.また,非心血管性失神は,①脳血管性失神,②代謝性失神,③心因性失神に大別される.失神発作と自律神経の関係が特に注目されるのは,反射性失神と起立性低血圧においてである.[荒木信夫]
■文献
荒木信夫:失神発作.医学のあゆみ,200: 1169-1170, 2002.
水牧功一:神経調節性失神.Brain Medical, 24: 183-190, 2012.
中里良彦,他:失神発作.NanoGIGA, 3: 260-263, 1994.
田村直俊,他:失神.Clinical Neuroscience, 13: 234-235, 1995.

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百科事典マイペディア 「失神」の意味・わかりやすい解説

失神【しっしん】

意識障害の一種。気絶とも。脳の血液循環障害により,一過性に突然意識を失う現象。普通,顔面蒼白(そうはく)になり倒れる。原因は全身の貧血など循環器系の疾患や,自律神経失調症ヒステリー,精神的ショックなど。癲癇の一症状のこともある。痙攣(けいれん),譫妄(せんもう),錯乱などは伴わない。一般に回復は速い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「失神」の意味・わかりやすい解説

失神
しっしん

秒あるいは分の単位でおこるごく短時間の一過性の意識消失をいう。意識がある場合は意識清明と表現するが、意識の障害があるときには意識障害といい、その程度により、軽いものから高度のものへの順で、無関心、傾眠、昏眠(こんみん)、昏睡に分類する。昏睡はもっとも高度の意識障害で、種々の反射の消失、尿・便の失禁などを伴った意識の完全な消失を意味する。一過性の意識消失である失神は、一般に脳の一時的循環障害によるものとされている。しかし、心房・心室間の興奮伝導障害である房室ブロックの際に、1分間の脈拍数が50あるいは40以下の徐脈を呈するとともに、顔面蒼白(そうはく)、意識障害、失神をおこし、かつ、てんかん様けいれんをおこす場合は、アダムス‐ストークスAdams-Stokes症候群とよばれている。

[渡辺 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「失神」の意味・わかりやすい解説

失神
しっしん
syncope

一過性に意識を失うことをいう。急激な精神的衝撃,感動や生理的変化,あるいは外傷などによって一時的に脳貧血状態に陥るために起ると考えられる。そのほか起立性低血圧や頸動脈洞の圧迫によるもの,急激な排尿直後にみられるものなどあるが,脳卒中などにみられる昏睡状態とは区別されるのが普通である。なお,失神は仮死と異なり呼吸は存続している。

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普及版 字通 「失神」の読み・字形・画数・意味

【失神】しつしん

気絶する。

字通「失」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「失神」の解説

失神

 脳虚血による一時的な意識喪失.

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世界大百科事典(旧版)内の失神の言及

【気絶】より

…失神syncopeともいう。脳循環不全のため一時的な意識障害を生ずるものであり,徐脈,血圧低下,起立性低血圧などによって生ずることが多いが,高度の精神的ストレスによって生ずる心因性のものも少なくない。…

【気絶】より

…失神syncopeともいう。脳循環不全のため一時的な意識障害を生ずるものであり,徐脈,血圧低下,起立性低血圧などによって生ずることが多いが,高度の精神的ストレスによって生ずる心因性のものも少なくない。…

※「失神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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