何処ともなし(読み)いずくともなし

精選版 日本国語大辞典 「何処ともなし」の意味・読み・例文・類語

いずく【何処】 とも なし

※宇津保(970‐999頃)楼上上「古郷はいづくともなく忍ぶ草しげき涙の露ぞこぼるる」
※六家集本山家集(12C後)上「五月雨はいささ小川の橋もなしいづくともなくみをに流れて」
③ どこからであるかわからない。
浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)四「折ふし十二三のうつくしき女の子何国(イヅク)ともなく来りぬ」

いずこ【何処】 とも なし

① どこへというあてもない。
貫之集(945頃)六「山びこの声のまにまに尋ね行かばいづこともなく我や惑はむ」
② どこというはっきりした所もなく、ぼんやりとしている。
更級日記(1059頃)「あはれに、人離れて、いづこともなくておはする仏かなと、うち見やりて過ぎぬ」
③ どこという限定もない。一面に。
曾丹集(11C初か)「須磨あまも今は春べと知りぬらしいづこともなくなべて霞めば」

どこ【何処】 とも なし

① はっきりした素姓がわからない。たよりにならない。誰につくかわからない。
平家(13C前)一〇「下臈はどこともなきものにて、又人にかたらはれて、案内もやおしへんずらん」
② どこと、はっきり定まった所がない。出どころが確かではない。
※玉塵抄(1563)三「又談空とは虚空なとこともないとめはずあわぬことを云をも云たぞ」

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