保全経済会事件(読み)ほぜんけいざいかいじけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「保全経済会事件」の意味・わかりやすい解説

保全経済会事件
ほぜんけいざいかいじけん

第二次世界大戦後の混乱期に新興金融機関の破産が引き起こした社会問題。伊藤斗福(ますとみ)は、1948年(昭和23)東京に保全経済会という利殖金融機関を設立し、月利2分の超高率をマスコミを通じて宣伝した。同会は急成長し、悪性インフレによる預貯金目減りに悩む一般出資者十数万人から44億円余を集めた。しかし経営基盤が弱く経理もずさんだったため、53年春の株価暴落でつまずき、同年10月に休業、翌年7月に倒産した。伊藤は54年1月、詐欺等で逮捕された。同2月には国会で社会党議員平野力三が保全経済会の政治献金につき池田勇人(はやと)・佐藤栄作らの名をあげて証言、問題となった。伊藤は60年3月東京地裁で懲役10年の判決を受けた(控訴棄却)。

[宮﨑 章]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の保全経済会事件の言及

【疑獄】より

…〈疑獄〉という言葉は,元来入獄させるか否かが明確でなく,犯罪事実があいまいな事件を意味する。この種の事件は多かれ少なかれ政・官・財界に波及するため,現在では政治問題化した利権関係事件の総称となっている。政治問題として社会的に大きく取りあげられ,ジャーナリズムによる声高な批判を代償として,刑事事件としては訴追されることがきわめて少ないのが疑獄事件の特徴といってよい。 明治初期においては,山県有朋が関与したといわれる山城屋事件など,藩閥政府と政商とが特権の供与をめぐって直接結びついたケースがあり,多くは表沙汰にならなかった。…

【金融犯罪】より

…金融取引をめぐって行われる犯罪。この中には,(1)金融機関の役職員が不正に貸付けをする不正融資(金融)事犯,(2)高い利子で大衆投資家の投資を誘引し,倒産などにより損害を与える出資金・預り金事犯,(3)借り手の弱い立場に乗じて暴利をむさぼる高金利事犯,(4)銀行法等の金融業に関する法規違反,などが含まれる。なお,金融機関に対するいわゆる銀行強盗や,銀行員が職務上のコンピューター端末を悪用して金銭を引き出すといった事犯は,とくに金融取引固有の問題ではないので,これに含まれない。…

※「保全経済会事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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