日本大百科全書(ニッポニカ) 「保全経済会事件」の意味・わかりやすい解説
保全経済会事件
ほぜんけいざいかいじけん
第二次世界大戦後の混乱期に新興金融機関の破産が引き起こした社会問題。伊藤斗福(ますとみ)は、1948年(昭和23)東京に保全経済会という利殖金融機関を設立し、月利2分の超高率をマスコミを通じて宣伝した。同会は急成長し、悪性インフレによる預貯金の目減りに悩む一般出資者十数万人から44億円余を集めた。しかし経営基盤が弱く経理もずさんだったため、53年春の株価暴落でつまずき、同年10月に休業、翌年7月に倒産した。伊藤は54年1月、詐欺等で逮捕された。同2月には国会で社会党議員平野力三が保全経済会の政治献金につき池田勇人(はやと)・佐藤栄作らの名をあげて証言、問題となった。伊藤は60年3月東京地裁で懲役10年の判決を受けた(控訴棄却)。
[宮﨑 章]