化学辞典 第2版 「修復酵素」の解説
修復酵素
シュウフクコウソ
repair enzyme
紫外線,X線,γ線などの放射線は,突然変異を誘発するなどのさまざまな障害を起こすが,生体はこれに対して修復力をもち,この修復に関与する酵素を修復酵素という.いくつかの酵素が知られているが,紫外線障害の場合がよく研究されている.紫外線照射による障害の主因は,DNA中の隣り合ったピリミジン,とくにチミンが二量化することにある.この回復には,光の存在下での光回復と,光のない状態での暗回復の2種類がある.光回復には,光回復酵素が関与し,この酵素はチミンダイマーの開裂を触媒する.暗回復には,いくつかの酵素が関与し,最終的にはダイマー部分を切除してDNAを修復する([別用語参照]DNAの修復).まず,障害を受けたDNAに特異的にはたらくエンドヌクレアーゼが,ダイマーの近くに一本鎖切断をつくり,次にエキソヌクレアーゼがはたらいてダイマー部分が取り除かれる.するとDNA依存性DNAポリメラーゼが,取り除かれた一本鎖部分を合成し,最後にポリヌクレオチドリガーゼ(DNAリガーゼ)の作用によって切れ目が連結されて,障害前のDNAに完全に修復される.これらの酵素が欠損して,紫外線感受性になった突然変異株が単離されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報