化学辞典 第2版 「DNAの修復」の解説
DNAの修復
ディーエヌエーノシュウフク
repair of DNA
DNA複製時のミスマッチや,化学物質,紫外線,放射線などにより損傷を受けたDNAを,もとの形に修復すること.種々の方式があるが,以下の切断修復が主要である.
(1)塩基切断修復:異常塩基がDNA glycosylaseによって切断除去され,続いて,むきだしとなった糖鎖部分がapurinic/apyrimidinic DNA endonuclease(AP nuclease)によって切断除去されることにより,異常塩基を含むヌクレオチドが除かれ,ギャップができる.ギャップはDNA polymeraseⅠおよびligaseにより正しく埋められる.
(2)ヌクレオチド・フラグメント切断修復:紫外線照射によって生じるピリミジンダイマーなどは,複数のヌクレオチドが除去された後,置換される.修復酵素複合体により,まず変異部位が検出され,変異鎖側にのみ2か所ヌクレアーゼによる切断点ができる.切断点ではさまれたフラグメント(大腸菌の場合は12,酵母やヒトでは24~32個のヌクレオチド)が,helicaseの作用により相補鎖からはぎとられる.こうしてできたギャップは,polymeraseとligaseにより修復される.修復酵素に変異があるとがんになりやすい.15000 Gy もの放射線に耐える微生物Deinococcus radiodurans R1が存在する.[別用語参照]修復酵素
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報