日本大百科全書(ニッポニカ) 「修身書」の意味・わかりやすい解説
修身書
しゅうしんしょ
主として戦前期に用いられた学校道徳用教科書。「学制」(1872公布)下で使用された初期の修身教科書は欧米の翻訳書が中心で、のち、儒教主義による編集が主流となった。教育勅語の渙発(かんぱつ)(1890)で修身教授の内容が公定されてのちは、厳しい検定制度と相まって、著しく定型化された。さらに、勅語の主旨貫徹を求める議会の要請から、官撰(かんせん)修身書編纂(へんさん)事業が出発(1900)し、国定修身書の登場となった。1904年(明治37)から使用開始、10年、18年(大正7)、34年(昭和9)、太平洋戦争が始まる41年と大修正を受けた。45年(昭和20)12月、連合国最高司令部の指示で回収・破棄されるまで、修身教科書は政府公認の人間像を一貫して提示、国家による国民思想統一の役割を担ってきた。
[尾崎ムゲン]