改訂新版 世界大百科事典 「催乳薬」の意味・わかりやすい解説
催乳薬 (さいにゅうやく)
lactogen
乳汁分泌促進の目的で用いられる薬剤。現在臨床で用いられている唯一のものはプロラクチン製剤で,脳下垂体前葉から抽出して得られたものである。プロラクチンは催乳ホルモンではあるが,その効果発現には,副腎皮質,甲状腺や卵巣などに由来する各種の他のホルモンの関与が必要とされるため,この製剤の適用によってあらゆる場合に催乳効果を上げることは期待しがたい。また,近年,プロラクチンの作用発現には脳下垂体後葉から分泌されるオキシトシンも関係していると考えられるようになった(これは子宮収縮ホルモンであるが,分娩後の乳房に貯留した乳汁を射出させる効果も現す)。精神科領域で用いられる医薬品のうちドーパミンに拮抗する作用をもつ薬物のなかには,男女両性に妊娠と無関係に乳汁分泌を起こすものもあるが,この効果はあくまでその薬の副作用で,治療目的には応用されていない。
執筆者:大森 義仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報