日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーパミン」の意味・わかりやすい解説
ドーパミン
どーぱみん
dopamine
4-(2-アミノエチル)-1・2・ベンゼンジオールのこと。化学式はC8H11NO2。カテコールアミンの一つであり、エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の前駆体である。ドーパミンは、アミノ酸のチロシンからドーパを経て合成される。また、モノアミン酸化酵素やカテコールアミン-O-メチルトランスフェラーゼによって分解される。中脳や間脳などに存在する特定のニューロン(ドーパミン作動性ニューロン)で合成され、神経伝達物質として働く。中脳の黒質にあるドーパミン作動性ニューロンは、大脳半球の尾状核に軸索を投射している。パーキンソン病では、この黒質のドーパミン作動性ニューロンのドーパミン合成能が低下していることが知られている。間脳の視床下部の弓状核にあるドーパミン作動性ニューロンには、その軸索を正中隆起に投射するものがある。このドーパミン作動性ニューロンから放出されるドーパミンは、前葉ホルモンであるプロラクチンの合成・分泌を抑制するプロラクチン抑制因子として働く。すなわち、ドーパミンは正中隆起部の軸索末端から放出された後、(脳)下垂体門脈に入り、(脳)下垂体前葉まで運ばれ、プロラクチン産生細胞に作用する。ラットでは、視床下部のドーパミン作動性ニューロンの一部が(脳)下垂体中葉に軸索を伸ばし、中葉ホルモンである色素胞刺激ホルモンの合成・分泌を抑制している。
[高橋純夫]