充文(読み)あてぶみ

改訂新版 世界大百科事典 「充文」の意味・わかりやすい解説

充文 (あてぶみ)

充(宛)行状(あておこないじよう)/(あてがいじよう)ともいう。古代より近世へかけて土地や所職を給付するとき,給付者より発せられる文書。武家社会では下文(くだしぶみ),判物,書下,印判状などを用いることも多い。文書の冒頭あるいは本文中に充(宛)行文言がみえるものが多いが,〈可被全領知〉〈可有知行〉〈知行無異儀〉などの文言のことも少なくない。またこのような文言を欠くときもある。平安時代の充文の一例:〈宛行 家地山畠事 在阿弥陀院之内 四至(限東谷,限西大路,限南慶楽中垣,限北峯) 堂壇以北譲与於秀恵了,右件家地依政所之仰,僧春能宛行之状如件,嘉承二年(1107)十一月廿日 大法師(花押)〉(《平安遺文》1680)。中世の充文の一例:〈(越後国)古志郡脱庄石坂内松井法眼分,同郡同庄石坂内市川孫左衛門殿分事,可有知行之状如件,永正四年丁卯(1507)十二月晦日 定実(花押) 長尾孫四郎殿〉(《上杉家文書》1-198)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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