内科学 第10版 「先天性幽門閉鎖症」の解説
先天性幽門閉鎖症(先天性胃・十二指腸疾患)
病因
100万出生に1例のきわめてまれな先天異常である.家族内発生も報告されており,常染色体劣性遺伝と推測されている.合併奇形を有することが多く30〜55%で認められる.先天性表皮水疱症や先天性皮膚欠損症の合併が多い.先天性表皮水疱症では胎児期に粘膜障害が起こり,その治癒過程で幽門狭窄を発症すると考えられており,遺伝子異常が同一または近接していると推測されている.羊水過多を合併することが多く,胎児超音波検査にて診断される例も出てきている.
臨床症状
早産児,低出生体重児が多く,出生直後からの非胆汁性嘔吐と上腹部の膨満が特徴的である.腹部単純X線写真でいわゆるsingle bubble signが認められ,下部消化管ガスの欠損から診断は容易である.病型としては膜様閉鎖,索状閉鎖,盲囊状閉鎖,棒状閉鎖が分類される.
治療
手術術式は病型により異なるが,膜様閉鎖では膜切除+幽門形成,索状,盲囊状閉鎖では胃・十二指腸吻合が広く行われている.いずれにせよ一期的手術が好ましい.
予後
合併奇形がなければ本症の予後は比較的良好である.しかしながら全体としての生存率は低く43〜50%とされ,重篤な合併奇形や敗血症による死亡例が多い.[前田貢作]
■文献
Kimura K et al: Diamond-shaped anastomosis for duodenal atresia: an experience with 44 patients over 15 years. J Pediatr Surg, 21: 1133-1136, 1986.
日本小児外科学会学術・先進医療検討委員会:我が国の新生児外科の現況—2008年新生児外科全国集計—.日小外会誌,46: 101-114, 2010.
Tan KC, Bianchi A: Circumumbilical incision for pyloromyotomy. Br J Surg, 73: 399, 1986.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報