出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
再生不良性貧血は、
年間の発生数が、人口100万人あたり約6人のまれな病気です。年齢別の罹患率では、20代と60~70代にピークがあります。再生不良性貧血の80%以上は誘因が不明ですが、一部は、抗生剤や鎮痛薬などの薬物投与、ウイルス感染、原因不明の肝炎などに続いて起こります。
再生不良性貧血の治療方針(図1、図2)や予後は重症度によって大きく異なるため、診断時の血球減少の程度によって重症度がステージ1から5に分けられています。
再生不良性貧血では、発病から治療を受けるまでの期間が短ければ短いほど改善する確率が高いことがわかっています。このため、最近では血球減少の程度が軽くても、発病後早期に治療が行われるようになっています。
再生不良性貧血は、何らかの未知のウイルス感染や薬剤・環境因子などにさらされることが引き金になり、造血幹細胞自体の異常や造血幹細胞に対する免疫反応が誘導され、造血幹細胞が増殖できなくなった結果、発症すると考えられています。
造血幹細胞に対する免疫反応が存在することは、再生不良性貧血の多くが抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG)やシクロスポリン(CSA)などの免疫抑制薬によって改善することから想像されています。
なお、ファンコニー貧血という先天性の再生不良性貧血では、造血幹細胞の遺伝子の異常が検出されます。
主な症状は、顔面の蒼白・息切れ・動悸・めまいなどの貧血による症状と、皮下出血斑・歯肉出血・鼻出血などの出血傾向です。好中球減少の程度が強い例では、感染を併発して発熱が認められることもあります。貧血が高度であっても進行が遅い場合には症状がなく、検診で異常を指摘されて初めて来院される患者さんもいます。
すべての血球が減少している(
骨髄を検査できる骨は、胸骨という胸の中心に位置する骨と、腸骨という骨盤の骨に限られています。全身の骨髄の状態を評価するためには、MRI検査を行う必要があります。MRIの結果、胸部や腰部の
再生不良性貧血との区別がとくに難しいのは、骨髄異形成(こつずいいけいせい)症候群のうち、骨髄中の
不応性貧血や、不応性貧血か再生不良性貧血かの判断に迷う例のなかには、
再生不良性貧血に対する治療の二本柱は、免疫抑制療法と、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する血縁ドナーからの同種骨髄移植です。20歳未満の若年の患者さんでHLAの一致する血縁ドナーが得られる場合には、一般に同種骨髄移植が適しています。40歳以上の患者さんでは、移植に伴う合併症のために生存率が低下するので、免疫抑制療法が第一選択の治療と考えられます。
20~40歳の患者さんに対しては、骨髄移植と免疫抑制療法のそれぞれの長所・短所をよく説明したうえで、患者さんの希望に応じた治療を選ぶ必要があります。免疫抑制療法の場合、治療が効いたとしても骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行する例が5~10%存在することが問題点です。一方、骨髄移植の場合は10%前後の移植関連死亡が起こることが問題です。
非血縁ドナーからの骨髄移植は、拒絶反応や
かつては、再生不良性貧血は治りにくい血液疾患の代表と考えられていましたが、治療法の進歩により、最近では逆に最も改善しやすい病気になっています。したがって、この病気が疑われたとしても悲観する必要はありません。ただし、前述のように治療が遅れると難治性になるため、再生不良性貧血が疑われた場合には、1日も早く専門医に相談されることをすすめます。
中尾 眞二
血液を産生している
大きく分けて2つの場合が考えられます。ひとつは幹細胞自体が減少する場合、もうひとつは骨髄に幹細胞がうまくはたらけなくなるような(免疫的な)ブレーキがかかってしまう場合です。
幹細胞自体を減らすものとして、特殊な化学物質や大量の放射線が知られています。
汎血球減少症で述べたように、感染症の症状、貧血の諸症状、出血が起こります。
軽症では治療を必要としないことがほとんどです。しかし、診断時には軽症でも数年間に中等症、重症に悪化することもあるので、経過の観察は必須です。中等症から重症の場合は、治療を行わなければ致死的な経過をとります。
治療は図36のように行います。骨髄移植とは、患児の骨髄をいったん破壊し、そこに健常なドナーの骨髄幹細胞を移植し育ってもらおうというもので、免疫抑制療法というのは幹細胞をはたらけない状態にしているブレーキを免疫抑制薬を使ってはずそうというものです。
細谷 亮太
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
骨髄の造血能力が低下し、赤色髄が減少して脂肪髄が増加、血中のすべての血球が減少(汎(はん)血球減少)し、かつ各種の治療法で治らない貧血をいう。特定疾患(難病)に指定されている。この病気にかかった骨髄を顕微鏡で見ると、赤色髄はきわめて乏しく、脂肪化し、血球の母細胞をはじめとしてすべての血球産生に乏しく、無形成の骨髄であり、造血の再生が不良である。そのため無形成性貧血ともよばれる。発生の仕組みの一つとして、造血幹細胞が減少することが立証されている。すなわち全血球のいちばん先祖の細胞が減少することにより、それから生まれる子供、孫などすべてが減ってしまうためである。原因がはっきりしているのは二次性再生不良性貧血で、放射線、抗癌(こうがん)剤、ベンゼン誘導体、重金属などの医薬品、工業薬品などを長期間、大量に使用すればかならず再生不良性貧血が発生する。抗生物質として優れた効果を示したクロラムフェニコール(クロロマイセチン)は、5万回の使用に対して1人の割合で再生不良性貧血が発生する。またサルファ剤、ピリン剤、抗けいれん剤、抗甲状腺(せん)剤、抗結核剤などおよそ薬剤といわれるもののすべてにわたるくらいに、過敏反応として本症発生の報告がみられる。しかし、原因が消失すると速やかに回復するのが二次性の特徴である。これに対して原発性(一次性)、特発性といわれるものがあり、発病は緩慢で慢性の経過をたどるものが多く、年齢別、男女間に発生頻度の差はみられない。
[伊藤健次郎]
症状は貧血と出血傾向が主で、一般に相当進行してからでないと症状(蒼白(そうはく)、息切れ、動悸(どうき)、めまい、歯肉出血、四肢の点状出血など)は出現しない。ことに慢性にゆっくりと貧血が進行すると、体が順応するために症状が現れにくいが、検査を行うと、赤血球、白血球、血小板が並行して減少している。白血球では、リンパ球は保存されて減少の程度が軽いため、比率でみると顆粒(かりゅう)球が減少して、リンパ球が増している。これをリンパ球比較的増加という。貧血は正球性正色素性貧血で、ときに経過の途中で軽い高色素性を示す例がある。出血傾向はもっぱら血小板の減少によるもので、出血時間は延長するが、凝血時間は正常である。
貧血と出血傾向を示し、血液検査で汎血球減少症を伴う病気は、再生不良性貧血と非常に紛らわしいので、区別をするのに困難な場合がある。白血球数の少ない非白血性白血病や骨髄中の脂肪が多くて細胞の少ない低形成性白血病など、白血病が定型的でない場合があるが、鑑別診断はかならずしも容易でない。そのほかにも汎血球減少を伴う病気が数多くあるが、骨髄穿刺(せんし)を行うことによって区別は容易となった。ファンコニー貧血は先天性再生不良性貧血であり、発作性夜間血色素尿症が再生不良性貧血とまったく類似してみえることがある。肝炎後の再生不良性貧血は、急性肝炎と同時か、続いておこり、急激で予後が悪い。
[伊藤健次郎]
造血の回復を図ることであるが、全例に有効な方法はまだない。しかし造血促進作用のある男性ホルモン、タンパク同化ホルモン、副腎(ふくじん)皮質ホルモンが効果を示す。ただし長期間投与が必要なため副作用に注意する。輸血療法も造血が回復して治療に反応するまでは絶対必要なもので、骨髄移植も考案されている。一般に3分の1は完治、略治、3分の1は予後が不良である。
[伊藤健次郎]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…血液検査による肝機能検査が重要である。(5)造血器障害 クロラムフェニコールにより,まれに再生不良性貧血を起こすことがあり,致死率は高い。このため,クロラムフェニコールは使用が制限されるようになった。…
…つまり,貧血は症状であって,病名ではなく,種々の病気がこの中に含まれている。貧血は発生原因や赤血球の形によって,鉄欠乏性貧血,再生不良性貧血,溶血性貧血,鉄芽球性貧血,悪性貧血などに分けられ,このうち鉄欠乏性貧血が最も多くみられる。
[貧血の医学的な定義]
医学的には,貧血は,血液の単位容積中のヘモグロビン濃度が,年齢および性を考慮した正常値に達しない状態と定義される。…
※「再生不良性貧血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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