先天性耳瘻孔(読み)せんてんせいじろうこう(その他表記)Preauricular sinus

六訂版 家庭医学大全科 「先天性耳瘻孔」の解説

先天性耳瘻孔
せんてんせいじろうこう
Preauricular sinus
(耳の病気)

どんな病気か

 遺伝が関係するもので、多くの場合耳介前方に小さな(あな)瘻孔)として認められ、その大きさは縫い針の穴程度のものです(図5)。時々その孔が耳介軟骨(じかいなんこつ)の上にできる場合もあります。

 耳介は胎児期にいくつかの軟骨性の塊が寄り集まってひとつの軟骨に形成されるものと考えられています。これらの塊がひとつの軟骨に癒合(ゆごう)する時にうまくできず、小さなすきまができてしまうのがこの病気だと推測されています。

 この小さな孔の下には袋状のものが隠れています。そこににおいのある白い泥状の分泌物がたまるとふくらみ、孔から自然に、または孔の周囲を圧迫すると分泌物が出てくることがあります。この分泌物が感染の原因となって炎症を起こす可能性があります。感染すると、袋ごと発赤してはれあがり、孔の周囲に痛みを訴えます。袋からさらに周囲の皮下組織に炎症が及ぶと発赤とはれが拡大し、うみがたまり、激痛が起きます。

治療の方法

 孔を見つけても何も症状がなければ放置してもかまいません。感染しないように孔の周囲を清潔にするように心がけてください。感染を起こした場合、初期ならなるべく外科的治療をせず、抗生剤や消炎薬などで治療します。しかし、炎症がひどくなり膿瘍(のうよう)になると内服薬では効かず、救急処置として、切開してうみを出す必要があります。いったん炎症がおさまったら、再度、袋ごと孔を摘出する手術を行います(図6)。

 袋はさまざまな形をしており、耳介軟骨に癒着することもあれば、軟骨を(つらぬ)いてさらに奥に入っている場合もあります。まれに袋が外耳道にまで達することもあります。緊急処置として過去に排膿のために切開を加えていると、瘢痕(はんこん)組織などで摘出術中に袋の形がわかりにくくなることがあります。

 袋を広範囲に摘出すればとくに問題はないのですが、袋が複雑な走行をした症例では摘出術中に袋の一部分が取り切れず、残ってしまうと再発することもあります。

中山 明峰


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「先天性耳瘻孔」の解説

せんてんせいじろうこう【先天性耳瘻孔 Congenital Aural Fistula】

[どんな病気か]
 両方の耳の孔(あな)の上のほうに見られるくぼみや孔で、それをゾンデ(袋状のものを探る棒状器具)でたどると、耳の軟骨の上を細長い袋のように2~3cmくらい後方にむかって伸びる盲管(もうかん)になっています。多くは生まれたときから存在します。
 その孔のところに黄色い栓(せん)のようなものがあったり、炎症をおこして孔の周囲が赤く腫(は)れ、孔から膿(うみ)が出たり、痛んだりすることがあります。
[治療]
 これらの症状を何回もくり返す場合は、この盲管をまわりから剥離(はくり)して取ってしまう摘出術(てきしゅつじゅつ)を行なうと、根治します。
[日常生活の注意]
 炎症がおこらないように耳を清潔にし、腫れや痛みが軽いうちに薬の内服などで炎症の増悪(ぞうあく)を防ぎましょう。
 あまり頻繁(ひんぱん)に炎症をくり返すと、皮膚炎が広がり、摘出術を行なう際の切開などの妨げになったり、目立つ傷跡が残ったりすることもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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