化学辞典 第2版 「光化学平衡」の解説
光化学平衡
コウカガクヘイコウ
photochemical equilibrium
光を照射することによってあらたに生じる化学平衡.光の吸収係数の相違や光による後続反応の速度への影響などのため,正反応と逆反応の速度が,熱化学的な場合と異なるとき光化学平衡が生じる.酸-塩基平衡の場合,分子の会合と解離の場合,および互変異性の場合などで観測される.たとえば,2-ナフトールの水溶液は弱酸(pK 9.6)であるので,強酸性溶液では2-ナフトラートイオンはほとんどなくなってしまう.ところがナフトールの第一吸収帯(300~330 nm)の光の照射下では,pH 3という強い酸性溶液でもナフトラートイオンが観測できる.すなわち,2-ナフトールの励起状態では酸-塩基平衡がいちじるしく酸性側に寄っている(pK2.82).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報