量子力学的な系について、基底状態より高いエネルギーの状態をいう。量子力学的な系とは、原子や分子、固体の中の電子など、また原子核や素粒子など、ニュートン力学によってではなく、量子力学を用いて扱わねばならない系のことである。その一般的特徴は、系のとりうるエネルギーがとびとびの値に限られることで、エネルギーのもっとも低い状態(基底状態)とその上の状態(第一励起状態)、さらにその上の状態(第二励起状態)などとは、有限のエネルギー差をもち判然と区別できる。たとえば、塩化水素分子の回転運動は(ħ2/2I)J(J+1)(J=0,1,2,……,ħはプランク定数を2πで割った商、Iは分子の慣性能率)という値のエネルギーでのみおこり、J=0の基底状態と、J=1の第一励起状態の間にはħ2/Iだけのエネルギー差があるので、塩化水素の気体で分子どうしが衝突しても、激しい衝突でない限り分子が回転を始めることはない。励起状態にある原子や分子は多くの場合、光を出して基底状態に落ちる。原子核ならγ(ガンマ)線やβ(ベータ)線を出し、中性子などを放出することもある。
[江沢 洋]
『江沢洋著『現代物理学』(1996・朝倉書店)』▽『江沢洋著『量子力学1、2』(2002・裳華房)』
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量子力学系の定常状態のうち,基底状態以外のものをいう.電子状態,振動状態,または回転状態のどれか一つだけに注目している場合には,電子励起状態,振動励起状態などともいう.一般には,エネルギーを放射したりほかの系に与えたりして基底状態に遷移するか,分子系の電子励起状態の場合には分解を起こしたりして,系が励起状態にとどまる寿命はきわめて短い(10-7~10-10 s)が,そのようなエネルギーを失う過程の確率が小さい場合には,準安定状態となってかなり長い寿命をもつこともある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…定常状態を単にエネルギー準位という場合もある。最低のエネルギー準位に対応する状態を基底状態,それより高いエネルギーの状態を励起状態という。励起状態はある平均寿命で下の状態に遷移するので,準位は不確定性原理による幅をもつ。…
…lが0,1,2,……の状態を,分光学的な起源をもつ記号s,p,d,……で表す慣習があり,1sのsはこれによるものである(これについては〈原子スペクトル〉の項目に詳しく述べてある)。 基底状態以外の定常状態は励起状態と呼ばれ,とくに,エネルギーのもっとも低い励起状態は第一励起状態と呼ばれる。水素原子の第一励起状態のエネルギーは,ボーアの原子模型のn=2の状態のエネルギーと一致する。…
※「励起状態」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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