日本大百科全書(ニッポニカ) 「八坂瓊勾玉」の意味・わかりやすい解説
八坂瓊勾玉
やさかにのまがたま
長い緒に通した勾玉で、三種の神器の一つ。八坂瓊之五百箇御統(やさかにのいほつみすまる)などともいう。聖なる装飾品として神祭や服属の証(あかし)とされ、また鏡や剣と一組にして副葬品に用いられる(弥生(やよい)時代中期から古墳時代前半期)。石屋(いわや)から天照大神(あまてらすおおみかみ)を導き出すために、鏡や木綿(ゆう)とともに賢木(さかき)にかけられる。「仲哀(ちゅうあい)紀」に、五十迹手(いとで)が賢木に鏡・剣とともにかけて天皇を迎えたのはその例である。「垂仁(すいにん)紀」には、丹波(たんば)国の人の犬が狢(むじな)を殺し、その腹中から八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を得て奉献し、石上(いそのかみ)神宮(奈良県天理市)に納められたという。だがこの玉の伝承は、出雲(いずも)の玉作との関連が濃く、のちに三種の神器の一つとなるのは、天照大神との関連が重視されたからであろう。
[吉井 巖]