日本大百科全書(ニッポニカ) 「八島官女」の意味・わかりやすい解説
八島官女
やしまかんじょ
歌舞伎(かぶき)舞踊。長唄(ながうた)。本名題(ほんなだい)『八嶋落官女(やしまおちかんじょ)の業(なりわい)』。単に『官女』ともいう。1830年(文政13)3月、江戸・中村座で中村芝翫(しかん)(4世歌右衛門(うたえもん))が踊った九変化(へんげ)舞踊『第二番目九変化(そのこうへんはなのここのえ)』の一節で、作詞松井幸三、作曲杵屋(きねや)三郎助(10世六左衛門)。平家滅亡後、屋島の浦に生き残った官女が、魚を売り、売色もしながら、昔を懐かしむという内容。地歌『八島』の歌詞が用いられている。初演の振は絶えたが、近年復活。前半は海女(あま)の姿で色気を見せ、後半は緋(ひ)の袴(はかま)の官女姿で薙刀(なぎなた)を振るう。
[松井俊諭]