八島
やしま
[現在地名]上関町大字八島
熊毛半島の南海上にある、南北に長く瓢箪形をした島。近世には大島郡に属し、一島一村で上関宰判に属した。
仁平二年(一一五二)八月一日の周防国在庁下文(鳥居大路文書)に、
<資料は省略されています>
とみえ、賀茂社(現京都市)領であった。文治二年(一一八六)九月五日付の源頼朝下文(賀茂別雷神社文書)は矢島など周防国内の賀茂別雷神社領に対する土肥実平・大野七郎遠正の不当行為を停止させている。
八島
やしま
千田八幡宮社前に所在する五反余の池に浮ぶ八つの小島。地元では千田の八島とよぶ。「国誌」はこの島の成立に関して二つの説を挙げる。一つは崇神天皇の時、八頭の大亀の魂神が高天山(揺岳)に凝り上り八神殿と化身したので、千田の県に八島を造って八神を祀ったとする。一つは阿蘇大明神の茂賀ノ浦三千町の干拓の説話にみられる八頭の大亀出現、その八頭にかたどって八島を造ったとする。「国誌」には五月五日に祭礼が行われ、池には蓮がしげり、池に住む鮒はすべて片目で古くから漁することを禁じられていること、禁を犯して社木を伐ったり池を埋めたりした者が神罰をこうむり滅びたといったことなどを記す。
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八島【やしま】
能の曲目。屋島とも記す。修羅物。五流現行。前段は源義経の霊の化身である老漁夫によって屋島の風物,古戦場の哀愁,義経の英姿が語られ,義経の霊が昔の姿で現れる後段では,弓流しのありさまと修羅道の闘争を示し,春の朝嵐とともに消える。堂々たる構成の修羅能の雄編。世阿弥作とされる。この能の歌詞を抜粋・補綴した地歌《八島》(《屋島》とも)は天明(1781年―1789年)以前ころから行われ,それを舞地とした上方舞は修羅物の代表作としてよく行われる。
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やしま【八島】
日本の芸能,音楽の曲名。(1)能。観世流は〈屋島〉とも書く。二番目物。修羅物。世阿弥時代からある能。シテは源義経の霊。旅の僧(ワキ)が八島(屋島)の浦へ赴くと,老人(前ジテ)と若者(ツレ)の2人の漁夫がやって来るのに会い,その塩屋に泊めてもらう。老人は僧に求められて,源平の八島の戦の話をする。それは,ひときわ目立った義経の勇姿,悪七兵衛景清(あくしちびようえかげきよ)と三保谷四郎(みおのやのしろう)の錣引き(しころびき)の力競べ,主人をかばって敵の矢を受けて死んだ佐藤継信(つぎのぶ)と菊王のふるまいなどの話であった。
やしま【八島】
幸若舞の曲名。作者不明。上演記録の初見は《言継卿記》の永禄2年(1559)条。山伏姿に身をやつし平泉に落ちる判官義経一行は,奥州信夫(しのぶ)の佐藤の家に宿を取る。接待に出た尼公は,わが子継信・忠信が父庄司の制止を振り切って,源氏の旗揚げに参加したことや2人の帰りを待ちわびた庄司が死ぬとき,嫁たちが兄弟の鎧を着て慰めたことなどを物語る。素性を明かせない義経は弁慶に命じ,廻国の僧を装って継信・忠信の戦場での活躍ぶりや最期のさまを語らせる。
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八島
やしま
(1) 能の曲名。二番目物。勝修羅物の一つ。世阿弥作。西国行脚の僧が八 (屋) 島で漁翁 (実は源義経) の小屋に宿り,源平合戦の話を聞く。その夜僧の夢に義経の亡霊が出て,弓流しのことや修羅道で平教経と戦うありさまを語る。 (2) 地歌・箏曲の曲銘。「屋島」とも記す。謡い物。尾張の藤尾勾当作曲。詞章は能の『八島』に典拠しているが,能に拠らない部分もある。京都の木ノ本巴遊が弾きはやらせたと伝える。三弦は三下り。箏の手はさまざまにあり,名古屋では吉沢検校,京都では八重崎検校,大阪では菊原琴治の手付が知られている。途中の合の手は手事風で,砧地との合奏が可能。舞地としても使われる。なお,これを移曲した荻江節のほか,幸若舞曲などに同名曲がある。
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八島
日本海軍の戦艦。富士型戦艦の2番艦。前弩級戦艦。イギリスで建造され、1897年9月に竣工、同年11月に横須賀に到着。日露戦争の旅順攻撃に参加。1904年5月、旅順港外で触雷し沈没。
八島
大分県佐伯市、佐伯湾内の番匠川河口近くに位置する無人島。島の南端には八島龍神社がある。
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世界大百科事典内の八島の言及
【那須与一】より
…平曲の中でもっとも有名な曲で,昔も今も演奏の回数が多い。能《八島》のアイの〈那須与一之語〉〈那須之語〉などの原拠。【横道 万里雄】。…
【弓流】より
…戦(いくさ)物語もっぱらの曲だが,旋律を聞かせる中音(ちゆうおん)・三重(さんじゆう)などの曲節が1ヵ所もないのは珍しい。能《八島》の原拠。(2)能《八島》の小書(変型演出の名)。…
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