改訂新版 世界大百科事典 「共力剤」の意味・わかりやすい解説
共力剤 (きょうりょくざい)
synergist
薬剤自身は薬効を示さないが,殺虫剤と混合して用いると殺虫効果を著しく高めるような薬剤。ジョチュウギク成分の殺虫剤であるピレスロイド系薬剤には,セサメックス,ピペロニルブトキシド,スルホキシド,プロピルアイソームなどの共力剤が知られる。これらは殺虫剤の生体内での代謝分解を行うミクロソーム複合酸化酵素(mfo)の阻害剤で,ピレスロイドの生体内における分解を抑えることによって殺虫剤の薬効を高める。カーバメート系殺虫剤の代謝分解も,前記のmfoによって行われるので,これらmfo阻害剤は共力剤となる。DDTの共力剤としては,DDTと類似の構造を有する共力剤が知られており,これらはDDTを脱塩素化水素化する酵素デヒドロクロリナーゼの活性を阻害することによって共力作用を示す。
執筆者:高橋 信孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報