DDT(読み)でぃーでぃーてぃー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「DDT」の意味・わかりやすい解説

DDT
でぃーでぃーてぃー

ジクロロジフェニルトリクロロエタンdichlorodiphenyltrichloroethaneの略称。正式化学名は2,2-bis (p-chlorophenyl)-1,1,1-trichloroethane。USP記載名はクロロフェノタン。有機合成殺虫剤先駆をなすもので、1874年にツァイドラーOthmar Zeidler(1859―1911)により合成され、1939年にスイスのP・H・ミュラーによって殺虫力が発見された。第二次世界大戦中ドイツやアメリカで軍用使用され、戦後は各国でカやハエシラミなどの衛生害虫、あるいは農作物害虫防除に広く用いられた。ベンゼンに結合するクロルの位置により4種の異性体があるが、殺虫力の強いのはp,p'(粗製品中約80%)で、白色針状結晶。モノクロルベンゼンとクロラール硫酸で脱水縮合して合成する。水には溶けない。化学的に、また微生物的に分解しにくい安定な化合物である。DDTは神経繊維に作用する神経毒で、冷血動物に強い毒性を現し、哺乳(ほにゅう)類などの温血動物に対しては概して弱い。食物連鎖によって生物濃縮され、最終的に人体脂肪組織に蓄積されるため残留毒性が問題となって、1969年(昭和44)より日本では自粛的に生産を中止し、1971年から使用が禁止となった。

[村田道雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「DDT」の意味・わかりやすい解説

DDT
ディーディーティー
dichlorodiphenyl-trichloroethane

C14H9Cl5昆虫類に対する神経毒として殺虫作用をもつ塩化ジフェニルエタン系化合物。最も殺虫作用の強いのは pp′-体であるが,殺虫剤としての工業製品は pp′-体約 65~80%を含む異性体混合物である。クロロベンゼンとクロラールを硫酸の存在で反応させてつくる。白色粉末で,融点は 90℃前後。 1874年に合成されていたが,1939年スイスの P.ミュラーらによりその殺虫効果が発見され,広く防疫,農業用殺虫剤として用いられるようになった。昆虫に対しては接触,経口的に作用するが,あぶら虫,だに,温血動物に対する毒性は小さい。しかし残存農薬は害虫以外の生物にも影響を及ぼすおそれがあるので,日本では使用を禁止された。

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