内田百〓(読み)うちだひゃっけん

改訂新版 世界大百科事典 「内田百〓」の意味・わかりやすい解説

内田百 (うちだひゃっけん)
生没年:1889-1971(明治22-昭和46)

小説家,随筆家。本名栄造。別号百鬼園。岡山市生れ。1914年東大独文科卒。陸軍士官学校,法政大学教授を歴任。六高時代に俳句を学び,また夏目漱石の作品に親しむ。1911年漱石を訪ね,以後門下となり,著作の校正などを手伝い,漱石没後は全集編纂に加わる。漱石の《夢十夜》やE.T.A.ホフマンの作に影響をうけ,存在の不安感を夢や幻想に託した小品,短編を執筆,21年以降それらを発表し,一部に注目された。《冥途》(1922),《旅順入城式》(1934)などを刊行する一方,《百鬼園随筆》(1933),同続編(1934),《阿房列車》(1952)などで,独自の随筆のジャンルを開拓した。鋭い観察ととぼけた味わいの筆致の絶妙なバランスは,近代日本の文学に類例がなく,従来の文学史では十分位置づけられているとはいい難い。しかし,生涯の貧乏暮しから生まれた気品ある散文は,大正・昭和の精神史を考える上でも貴重で,再評価の気運がたかまっている。
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