凝縮核(読み)ギョウシュクカク

化学辞典 第2版 「凝縮核」の解説

凝縮核
ギョウシュクカク
condensation nucleus

清浄な蒸気の温度を下げて飽和蒸気圧に達すると,蒸気が凝縮して霧が発生するはずであるが,実際にはそれよりもはるかに低温にしなければ,霧の発生は起こらない.これを過冷却あるいは過飽和という.この状態にある蒸気に,微小な液体あるいは固体粒子またはイオンを与えると,たちまちそれらが核となって霧が発生する.これを凝縮核という.ウィルソン(Wilson)の霧箱はこの現象を利用して,α線,β線などの飛跡にそって霧を発生させる装置で,近代原子核物理学の発展に大きな貢献をした.このとき凝縮核がなくとも,十分冷却すれば霧は発生するが,このときには密度のゆらぎが起こって,蒸気分子の一時的集合状態が凝縮核の役割をするものと考えられる.溶液から溶質が析出したり,液相から気泡が発生するときなど,一般に均一系から異相が発生するときにも類似の現象が認められる.La Mer(1952年)は食塩を気相中に蒸発させ,これを凝縮核として種々の有機物の単分散の霧をつくることに成功した.溶液中で単分散のコロイドをつくることにもこの方法は用いられる.[別用語参照]トムソンの法則

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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