霧箱(読み)キリバコ

デジタル大辞泉 「霧箱」の意味・読み・例文・類語

きり‐ばこ【霧箱】

ウィルソンの霧箱

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精選版 日本国語大辞典 「霧箱」の意味・読み・例文・類語

きり‐ばこ【霧箱】

  1. 〘 名詞 〙ウィルソンの霧箱(きりばこ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「霧箱」の意味・わかりやすい解説

霧箱
きりばこ

気体の中を荷電粒子またはX線、γ(ガンマ)線などの短波長の電磁波が通過すると、これらの放射線との電磁的相互作用によって、気体分子が電離される。気体が適当な過飽和度の水蒸気で満たされていると、過飽和の水蒸気は電離された気体分子を核にして液化し、放射線の通過した道筋(飛跡)に沿って霧ができる。このような原理に基づいて放射線の飛跡を観測する装置が霧箱である。C・T・R・ウィルソン飽和蒸気の満たされた容器を断熱膨張によって急冷し、過飽和の状態を生じさせる型の霧箱を考案した。この型のものを「ウィルソンの霧箱」とよんでいる。これに対し、容器の上部をヒーターで熱し、下部をドライアイスで冷やして容器内の気体に温度勾配(こうばい)をつけ、容器の上部に水を入れて飽和蒸気圧の状態にすると、高温で飽和状態の水蒸気は、低温の部分に拡散して過飽和状態となり、適当な高さのところに、放射線の飛跡に沿って霧を生じうる部分ができる。この型のものを拡散型霧箱とよんでいる。ウィルソンの霧箱では、断熱膨張ののち、熱伝導などによって急速に状態が崩れ、放射線の飛跡に霧が生じうる時間(感応時間)は10分の1秒程度であるが、拡散型では連続観測が可能である。霧箱は原子核反応、とくに宇宙線の研究で重要な役割を果たしたが、新しい各種の装置の開発に伴い、現在では放射線測定装置としてはほとんど利用されていない。

[西村奎吾]


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百科事典マイペディア 「霧箱」の意味・わかりやすい解説

霧箱【きりばこ】

過飽和した水蒸気の凝結を利用して,放射線粒子の飛跡を見る装置。水蒸気で飽和した室を急に断熱的に膨張させると,温度が下がって過飽和状態になり,その中を放射線粒子が通ると,電離作用で生じたイオンを核として水蒸気が凝結し,粒子の飛跡に沿って水滴が並ぶ。C.T.R.ウィルソンの考案。ガイガー=ミュラー計数管と連動させたり,磁場をかけたり,適当な照射物質を配置させるなど進歩改良が加えられ,原子核物理学の発展に大きく貢献した。→泡箱
→関連項目アンダーソン宇宙線エイトケン細塵計原子核乾板放射線

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改訂新版 世界大百科事典 「霧箱」の意味・わかりやすい解説

霧箱 (きりばこ)
cloud chamber

気体中に生ずる霧によって荷電粒子の飛跡を検出する装置。1911年前後にC.T.R.ウィルソンにより実用化されたことからウィルソン霧箱とも呼ばれる。十分に飽和した気体を急に膨張させると過飽和状態になるが,このときに荷電粒子が入射して気体の分子が電離されるとイオンを核として気体が凝縮して粒子の飛跡に沿って水滴(霧)が生成される。この現象を利用して粒子の検出を行うのが霧箱で,気体としては主としてアルゴンと気体状態の水とプロピルアルコールを混合したものが使われる。コンプトン散乱の立証,陽電子の発見も霧箱でなされ,また原子核衝突,宇宙線の研究などに用いられたが,現在では泡箱放電箱が主流となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「霧箱」の意味・わかりやすい解説

霧箱
きりばこ
cloud chamber

荷電粒子が水あるいはアルコールの蒸気で過飽和の気体の中を走るとき,進路に沿ってつくる霧滴により粒子の飛跡を観測する装置。その原理は 1911年チャールズ・T.R.ウィルソンによって発見された。断熱膨張を利用する方式と温度勾配を利用する方式があり,普通ウィルソンの霧箱というときは前者をさし,後者を拡散霧箱という。前者では,容器中に空気またはアルゴンとともに水またはエチルアルコールの飽和蒸気を入れ,ピストンによって断熱膨張させて蒸気を過飽和にすると,荷電粒子がつくったイオン対を核にして成長した霧滴ができる。後者では容器の上部を加熱し底部を冷却し,生じた飽和蒸気を下方に拡散させて過飽和にする。霧箱は素粒子物理学の発展に非常に貢献している。

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化学辞典 第2版 「霧箱」の解説

霧箱
キリバコ
cloud chamber

気体中に霧をつくっておき,荷電粒子を通過させてその飛跡(トラック)を観測する装置.イギリスの物理学者C.T.R. Wilson(1927年,ノーベル物理学賞受賞)が発明したので,ウィルソンの霧箱ともいう.現在,荷電粒子の飛跡を観測する装置として泡箱がある.これは,D.A. Glaser(1960年,ノーベル物理学賞受賞)が発明したもので,ある種の液体,たとえば液体水素を沸騰寸前の状態にしておき,荷電粒子を通過させ,生じる泡で飛跡を観測する.

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