出雲国風土記鈔(読み)いずものくにふどきしよう

日本歴史地名大系 「出雲国風土記鈔」の解説

出雲国風土記鈔
いずものくにふどきしよう

四冊 岸崎佐久次著

成立 天和三年

写本 島根大学附属図書館など

解説出雲国風土記」の最初の注釈書。著者は松江藩初期の農政官として有能な人物で、本書のほかに「免法記」「田法記」の著作があり、これらは藩の農政を制度上確立させた書である。三二年余にわたって藩の地方役を勤め、最後に神門郡の郡奉行を勤めたが、その間職務で巡視する郡村山野を熟知し、その知識を基に風土記について地理的考証を加えたのが本書である。風土記の記載にのっとってすべて本文を記し、一字下げて「鈔曰」と注記して考証が記されている。本書は今も風土記研究家にとって頼るべき書となっている。著者がどの風土記を用いて考証を行ったかは定かでないが、伝写本としても優れた史料といえる。諸所に写本・伝書本があり、「出雲国風土記諺解鈔」「出雲国風土記俗解鈔」という書名で伝わったものもあるが、別書ではない。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報