分子線エピタクシー(読み)ぶんしせんエピタクシー(英語表記)molecular beam epitaxy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分子線エピタクシー」の意味・わかりやすい解説

分子線エピタクシー
ぶんしせんエピタクシー
molecular beam epitaxy

超高真空 ( 10-9 トル以下) 中で蒸発分子ノズル,あるいはスリットからビーム状にして基板結晶上に到達させ,良好な単結晶を製作するエピタキシャル技術の一つ。通常,蒸発源のるつぼ (クヌーセンセルと呼ぶ) は液体窒素 (沸点-196℃) で冷却した蒸発室内に納められている。1個あるいは複数個のクヌーセン・セルから蒸発してくる原子あるいは分子状の成分元素は小孔を通ってビーム状になり基板に到達する。基板に付着しなかったものは真空系に運び去られるか,冷却トラップに捕えられるかして除外されるので,基板表面には常に蒸発源からの新しい原子または分子のみが到達する。基板に到達する各元素の原子または分子数は蒸着系の幾何学的配置と蒸着源の温度によって決められるので,厚さ方向に任意の組成比をもつ単結晶が連続的に製作できる。結晶成長がゆっくり行われるので他の方法に比べて低温で成長させることができ,不純物原子の添加も容易である。非常に薄い層 (数 nm) を原子的レベルで平坦にでき,しかも成長方向にきわめて急峻に組成を変えることができるので,これを用いて種々の電子素子が製作できる。光ガイド,超格子,バラクタダイオード,インパットダイオード,注入型レーザーなどが試作されている。

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