インパットダイオード(英語表記)IMPATT diode

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インパットダイオード」の意味・わかりやすい解説

インパットダイオード
IMPATT diode

なだれ現象と走行時間効果を利用してマイクロ波を発振させる半導体素子。 impact avalanche and transit time diodeの略。 1958年 W.T.リードによって提案されたが,構造がやや複雑であったので,ただちに実証することはできなかった。 1965年になって R.L.ジョンストンらがもっと簡単な構造のダイオードでマイクロ波が発振することを実験的に見出した。リードの提案したダイオード (→リードダイオード ) は n+-p-i-p+ の構造をもち,電子なだれが生ずる n+-p 接合面と電荷 (正孔) が走行する p-i 領域がはっきり分かれている。しかし,p-i-n 構造あるいは単なる p-n 接合のダイオードをつくって電圧を加えると,ダイオード全体にわたってなだれが生じ,なだれ領域と電荷走行領域とをはっきり区別できなくなるが,マイクロ波が発振することに変わりはない。また,ダイオードの構造としてp型半導体とn型半導体を入れ替えても,走行する電荷が正孔から電子に代わるだけであって同様にマイクロ波が発振する。これら種々の構造のものを総称してインパットダイオードと呼ぶ。同じマイクロ波半導体素子であるガン効果ダイオードより大きな出力が得られ,マイクロ波通信装置の小型化,固体装置化,高信頼度化の一端を担っている。特性としてその典型的なものをあげると,シリコン半導体を用いたもので 10GHz,数W程度である。さらに高い周波数で発振させようとすると,半導体素子片そのものを小さくする必要があり,したがって出力も低下する。

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