分子識別(読み)ぶんししきべつ(その他表記)molecular recognition

改訂新版 世界大百科事典 「分子識別」の意味・わかりやすい解説

分子識別 (ぶんししきべつ)
molecular recognition

生体分子が,他の低分子または高分子を特異的に識別して反応すること。酵素分子が,細胞内のなん千種類もの分子の中から,特定の基質を識別して作用することは典型的な例である。生命現象は無数の分子識別過程から成り立っている。識別能力をもつ代表的分子はタンパク質であり,酵素のほかにも,例えば抗体抗原をきわめて特異的に識別して結合する。タンパク質ホルモンは細胞表面の特定のレセプターを識別し,結合する。多くの膜タンパク質は特定の分子を識別して膜を通過させる。アクチンチューブリンのように自己集合する構造タンパク質は自己と同じ分子を認識して重合していく。T4ファージ構築では核酸を含めたなん十段階もの識別過程が順次,段階的に進行する。タンパク質合成や核酸の複製には,核酸どうしや核酸とタンパク質間の識別が含まれている。分子識別においては,弱い相互作用と立体構造が重要な役割を果たしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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