家庭医学館 「前立腺の名の由来」の解説
ぜんりつせんのなのゆらい【前立腺の名の由来】
日本解剖学会の用語委員会が戦後、前立腺という訳語を採用するまでは、難解な「摂護腺(せつごせん)」が使われていました。
摂護腺の起源は、江戸時代、杉田玄白(すぎたげんぱく)らの翻訳書『解体新書』にさかのぼり、そのオランダ語の原本『ターフェル・アナトミア』中の「ホール・スタンデルス(前に立つ、または、存在する)」という用語を大槻玄沢(おおつきげんたく)が訳したといわれています。
「摂護」とは、対象は不明ですが「囲んで防御するもの」という意味で使われています(小川鼎三(ていぞう)、1983年)。しかし、解剖学者の藤田恒太郎(つねたろう)は、「摂護」を保摂・防護の意味に解し、尿の毒から精子を守るという意味だとしているのは、わかりやすくておもしろい考えだと思います。