日本大百科全書(ニッポニカ) 「南蛮料理」の意味・わかりやすい解説
南蛮料理
なんばんりょうり
16世紀後半、南蛮人(ポルトガル・スペイン人)とともに渡来した異国風の料理。それまで日本固有の料理法になかった、香味にネギや唐辛子などを用いたり、油で揚げたりする珍しい手法の料理をこうよんだのである。唐辛子を南蛮胡椒(こしょう)、単に南蛮といい、またトウモロコシやカボチャを南蛮とよぶこともある。『料理物語』(1643)には、南蛮料理について「鶏とダイコンを柔らかく水煮にして、吸い口に塩か薄みそ味をつけ、添え物としてヒラタケ、ネギなどを入れる」という意味の表現があるが、これは南蛮料理のすべてではない。また、『紅毛雑話』(1787年序)には、料理献立として、コクトヒス(焼き肴(ざかな))、ハクトヒス(油揚げ魚)、フラートハルコ(猪(いのしし)の股(もも)丸焼き)、コテレット(こしょうをした鶏肉に卯(う)の花、ネギをのせてよくたたき、紅毛紙に包んで焼く料理)など、古い形の洋食がみられる。これらの南蛮料理のなかから、のちに長崎の卓袱(しっぽく)料理に転じていったものが少なくない。『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(1830)に「葱(ねぎ)を入るるを南蛮と云ひ、鴨(かも)を加えてかもなんばんと呼ぶ」とあり、料理にネギを用いるときは、焼いて加えるのが南蛮の原則であったが、単に生ネギを加える料理も南蛮といっていた。
[多田鉄之助]