卓袱(読み)シッポク

デジタル大辞泉 「卓袱」の意味・読み・例文・類語

しっ‐ぽく【×袱】

《卓の覆いの意》中国風の食卓。4脚で高さ1メートル弱。多くは朱塗りで周囲紅白紗綾さやを垂れる。しっぽく台。
関西信州で、そば・うどんキノコかまぼこ・野菜などを入れて煮る料理。しっぽくうどん。しっぽこ
卓袱料理」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「卓袱」の意味・読み・例文・類語

しっ‐ぽく【卓袱】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しつ」「ほく」はそれぞれ「卓」「袱」の唐音 )
  2. 中国風の食卓をおおう布。また転じて、四本脚のついた、高さ一メートルほどの朱漆で塗った食卓をさしていう。しっぽくだい。しっぽこだい。〔和訓栞(1777‐1862)〕
  3. しっぽくりょうり(卓袱料理)」の略。
    1. [初出の実例]「しっぽくとやら申して、一つの鍋で煮た物を、そうぞうが箸を入れて喰ひあひ」(出典:浮世草子・諸芸袖日記(1743)四)
  4. そば、またはうどんに、かまぼこ、きのこ、野菜などの具をのせて、かけ汁をかけたもの。
    1. [初出の実例]「『うぬに食はせる蕎麦があるものか。蚯蚓(みみず)でも食はしてやらう』『しっぽくか、にふ麺(めん)にせう』」(出典歌舞伎彩入御伽草おつま八郎兵衛)(1808)大詰)

しっ‐ぽこ【卓袱】

  1. 〘 名詞 〙 「しっぽく(卓袱)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「『なんぞちょびと喰しゃれ』『大ひらにでもいたしませうか、またしっぽこ、おさしみはどふで御ざります』」(出典:洒落本・金錦三調伝(1783))

ちゃ‐ぶ【卓袱】

  1. 〘 名詞 〙 食事。めし。

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改訂新版 世界大百科事典 「卓袱」の意味・わかりやすい解説

卓袱 (しっぽく)

江戸時代に将来された中国料理は,民間在俗の料理と,黄檗(おうばく)僧などによって伝来された僧院料理の2系統があり,前者は卓袱料理といい,後者は普茶料理と呼ばれた。卓袱は〈しっぽこ〉〈すっぽこ〉などとも呼ばれ,〈卓子〉〈食卓〉の字もあてられ,八僊卓(ぱすえんちよ)と称されることもあった。卓袱はテーブルクロス,八僊卓は方形で8人掛けテーブルの意である。卓袱料理は長崎で始まった。

 17世紀末の長崎には,人口のおよそ1割を占める中国人が滞留したが,彼らは出島に隔離されたオランダ人とちがって,当初は市中の居住が許され,市民との交流も放任された。一時期には中国人のための料理を業とする日本人は35~36人を数えたといい,中国人への食料供給のための生産流通に従事した日本人もかなりの数にのぼったと思われる。また,1691年(元禄4)には中国人,オランダ人以外の豚,鶏の食用が禁止されており,異国的食肉習慣が長崎市民の間に拡大していたことがうかがわれる。

 18世紀の日本は空前の中国熱高揚期で,このようなブームを背景に,享保年間(1716-36)には長崎の人佐野屋嘉兵衛が京都に進出,卓袱料理店を祇園下河原に開いた。いまに続く料亭鳥居本の祖である。その後各地に卓袱料理店が開業し,大坂では野堂町の貴得斎,江戸では神田佐柄木町の山東(山藤)や日本橋浮世小路の百川(ももかわ)などが有名であった。そうした店で供された料理はおおむね日本人好みにアレンジされ,豚肉は魚鳥で代用され,卵料理や揚物の多かったことなどが特色だったようである。むしろ,料理名や器物名を中国風に呼び,部屋も中国風にしつらえるなど,ムードを満喫させることに重点が置かれていた。とくに一つテーブルを囲んで主客が同じ器から取り分けて食べることは,銘々膳を通常とした当時の日本人にとってよほど珍しかったとみえ,テーブルクロスないしはテーブルを意味する語をそのまま料理に冠して通称とした理由であろう。通常は,前菜ともいうべき小菜7~8種,大菜と呼ぶあたたかい料理が5~6種,多い場合は小菜16種,大菜9種が供された。現在では茶碗蒸し,けんちんなどに往時の姿が見られ,東坡煮(とうばに)(豚肉の角煮)などが特色とされる。
普茶料理
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百科事典マイペディア 「卓袱」の意味・わかりやすい解説

卓袱【しっぽく】

卓褓料理とも。長崎の郷土料理。日本化した中国料理で西洋風も加味されている。主客が一卓を囲む形式で江戸中期特に流行した。卓袱は本来は卓のおおい布のことで,それが卓および卓上の料理の意となった。初め小菜,次いで温菜が順次出され,豚の角煮や食後の汁粉などが特徴。なお寺卓袱とは精進料理の卓袱で普茶(ふちゃ)料理をいう。
→関連項目中国料理

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