日本大百科全書(ニッポニカ) 「原住民指定地」の意味・わかりやすい解説
原住民指定地
げんじゅうみんしていち
Native Reserve
南アフリカ共和国のアパルトヘイト(人種隔離)によってつくられた黒人居留地。19世紀末、ナタールのズールー人の反乱を抑えるため、T・シェプストン行政官によって、初めてこの制度が導入された。1913年の原住民土地法によって南アフリカ連邦全土に適用され、主要部族別に全国土の9%の土地を9原住民指定地に隔離した。36年には指定地での人口増大と黒人の参政権剥奪(はくだつ)と引き換えに指定地は全国土の13%にまで拡大された。さらに59年のバントゥー自治促進法によって、従来の隔離から指定地内での黒人自治を許す制度に変わった。さらに、71年のバントゥスタン憲法により、南アフリカ共和国を一つの白人国家と10の黒人部族国家(ホームランド)に分離することを決定した。これは、人口の71%を占める黒人を国土のわずか13%の散在する不毛の辺地に囲い込み、黒人から南アフリカ共和国の国籍を奪い、「外国人労働者」に変えてしまうという典型的なアパルトヘイトである。トランスケイ、ボプタツワナ、ベンダ、シスケイの四つのホームランドが「独立」したが、これを承認する国はなかった。やがて1994年アパルトヘイト廃止とともにホームランド「独立国」も崩壊し、各州に組み込まれた。
[林 晃史]