翻訳|Zulu
南アフリカ共和国に住むバントゥー系の民族集団。14世紀ごろまでに東アフリカから南下してきたと考えられる遊牧民ングニの一派。生業は農耕と牛牧の混合経済。人口は約845万(1991)で南アの民族集団中最大のものである。ズールーは19世紀の初めまでいくつかの首長国に分かれ対立・抗争を繰り返していたが、1818年シャカという人物が王位を簒奪(さんだつ)し強力な軍事国家を形成した。シャカは武器を改良して新しい戦闘陣形をつくりだし、軍隊に厳しい規律と訓練を施した。この強力な軍隊によって次々と近隣の地域、諸部族を征服・統合しズールーの大帝国を建設した。シャカは1828年に暗殺された。彼の死後ズールー王国は衰退し、白人入植者との戦いに敗れ79年国は13の首長国に分割された。
今日ズールー王国は南アのなかでいっさいの実効権力は剥奪(はくだつ)されているが、いまだにズールーのアイデンティティ(同一性)を保ち続けている。ズールー社会は外婚的父系クランに分かれ、各クランは一つの「賛美名」であるイシボンゴをもつ。ある人をそのイシボンゴでよぶことは敬意のしるしであり、同じイシボンゴをもつ人たちとでなければいっしょに牛乳を飲むことはできない。伝統的には一夫多妻婚で、円形の小屋が環状に並ぶ居住地に住む。円い小屋は子宮を表し、同一女性の子供は「同じ子宮の者」とよばれる。祖先崇拝が発達し、「天空の神」とかかわりをもつのは極度の干魃(かんばつ)のような大災害のときのみであり、日常生活においては「下界の霊」すなわち祖霊と密接なコミュニケーションを行う。女性の穢(けが)れの観念が強く、とくに出産直後はすべての男性、家畜から分離され、農耕に従事することも禁じられる。
[加藤 泰]
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