日本大百科全書(ニッポニカ) 「古代への情熱」の意味・わかりやすい解説
古代への情熱
こだいへのじょうねつ
Selbstbiographie bis seinem Tode vervollständigt
ドイツの考古学者H・シュリーマンの自叙伝。ただし彼自身の筆になるものは第1章「少年時代と商人時代」であり、他の部分は彼の死後、夫人ソフィアの依頼によってA・ブリュックナーが再構成したものである(初版1891)。第1章はシュリーマンの著書『イリオス』Ilios(英語版1880、独語版1881)の序文から抜粋されている。ここでは、彼が生涯心酔していたホメロスとの出会いや、その物語を現実のものとするためになした事業の成功への過程が語られている。第2章以下には、トロヤ、ミケーネの二大文明の大発見に至る経過が、彼の諸著書から引用され、あわせてシュリーマンの人物像が浮き彫りにされている。
[植山 茂]
『村田数之亮訳『古代への情熱』(岩波文庫)』