日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉田調書」の意味・わかりやすい解説
吉田調書
よしだちょうしょ
東京電力福島第一原子力発電所事故当時の所長であった吉田昌郎(よしだまさお)(1955―2013)の証言記録。事故が発生した際の現場の対応について、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)が吉田に聴取した内容が記録されている聴取結果書である。聴取日は2011年(平成23)7月22日、7月29日、8月8日、8月9日、10月13日、11月6日。
吉田本人の希望により調書は非公開記録となっていたが2014年5月に朝日新聞が独自に入手し、その内容に基づいたとされるスクープ記事を掲載した。記事は逸脱した誇張を行い、「(福島第一原発の)所員が大挙して所長の命令に反して福島第二原発に撤退」「命令違反の離脱行動があった」と報じた。この記事は世界にも転電され、「日本の原発所員は緊急時にはパニックになって逃げてしまう」という誤ったイメージを与える事態となった。これを問題視した政府は、2014年9月11日に調書の全文を公開した。朝日新聞社は同日のうちに記者会見を行い、記事を取り消すと発表したうえで謝罪した。
[編集部]