改訂新版 世界大百科事典 「周時経」の意味・わかりやすい解説
周時経 (しゅうじけい)
Chu Si-gyǒng
生没年:1876-1914
朝鮮の言語学者。黄海道鳳山の出身。朝鮮語の近代的研究は,李鳳雲,兪吉濬(ゆきつしゆん)のあとをうけて周時経によって本格的に開始された。1896年《独立新聞》の校正係をしながら〈朝鮮文同式会〉を作り朝鮮語表記の統一と研究に着手し,その後も各種の学校の教員や政府の国文研究所委員をしながら,民族固有のことばを整理・普及・発展させる民族的国文運動を展開し,そのための科学的言語研究に尽力した。主著に《国語文典音学》(1908),《国語文法》(1910)がある。前者は朝鮮語の音声論と綴字法に関する研究に新たな方法論を確立した著作であり,後者は音声論,品詞論,形態論,文章論等を論じた当代の代表的著作である。1921年創設の朝鮮語研究会(のちに朝鮮語学会となり,朝鮮語学会事件という弾圧を受ける)も彼の影響のもとに生まれた。
執筆者:大村 益夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報