弾圧(読み)だんあつ(英語表記)oppression
suppression

精選版 日本国語大辞典 「弾圧」の意味・読み・例文・類語

だん‐あつ【弾圧】

〘名〙
① ふみつけること。おさえつけること。おしつぶすこと。
霊異記(810‐824)下「一時に出家して、百人倶に阿羅漢果を得たり。我が聖朝弾圧する所(ばかり)の土(くに)に、是の善類有り」
② 他をおさえて、すぐれていること。圧倒すること。
性霊集‐五(835頃)与越州節度使求内外経書啓「弾圧班馬、金声玉振
③ 罪悪を、ただしおさえること。〔新唐書‐柳仲郢伝〕
支配階級権力で被支配者階級をおさえつけること。強権的におさえつけること。
故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六「一方弾圧がはげしいから」

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デジタル大辞泉 「弾圧」の意味・読み・例文・類語

だん‐あつ【弾圧】

[名](スル)おさえつけること。特に、支配者が権力を行使して反対勢力活動抑圧すること。「言論弾圧する」
[類語]抑圧圧迫威圧強圧暴圧圧制

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改訂新版 世界大百科事典 「弾圧」の意味・わかりやすい解説

弾圧 (だんあつ)
oppression
suppression

政治的反対勢力の政治活動を阻害,あるいは根絶するために,政治的支配層が国家権力軍隊,警察,裁判所など)を行使すること。一般に支配層はあらゆる機会をとおして被支配層を馴化(じゆんか)しようとするものであるから,いかなる政治体制にあっても,反体制勢力の政治的影響力を抑止するためにさまざまな支配技術を用いる。したがって,その影響力が制度的に保障されている限りにおいては,教育,宣伝,説得などによる統合を試みるが,体制存立の基礎を否定するような政治的勢力の登場や戦争などの危機に際して,支配層はその体制を維持するために直接的に暴力を行使する。その場合,支配層は体制保持のために,治安の維持,公共の福祉などの名目においてみずからを正当化し,反体制勢力は社会的悪として疎外される。ビスマルクによる社会主義者鎮圧法(1878)はドイツの社会主義運動に対する弾圧の意図表明であり,ソビエトでの大粛清スターリンにとって潜在的脅威となる共産党員に対する予防弾圧であった。

 弾圧はその被害をこうむる側に打撃を与え,分裂を誘うこともあるが,その反面,被弾圧者全体の団結を強め,地下運動など非合法な運動を誘発し,支配の動揺を深めることになりがちである。いずれにせよ弾圧がなされる社会状況は,全般的にみれば社会全体での価値の再配分が要請されている局面であり,支配層の弾圧による価値剝奪も一時的効果を有するにすぎない。その意味では,弾圧と同時に部分的価値付与のような補完的手段を伴うことも多い。たとえば,ビスマルクは社会主義者鎮圧法による弾圧のかたわら社会保険諸立法(1883以降)による懐柔策を採ったが,F.メーリングはこの政策を〈飴と鞭〉と表現している。
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普及版 字通 「弾圧」の読み・字形・画数・意味

【弾圧】だんあつ

おさえる。力でおさえこむ。梁・何〔七召〕乃ち壁上の眞辭、枕中の祕(ごと)きは、氣を彈壓し、靈妙を吐(となふ)す。に醜を變じてし、亦た老を反して少と爲す。

字通「弾」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の弾圧の言及

【抑圧】より

…自我の防衛機制のなかのもっとも基本的なものであり,他のすべての防衛機制の前提である。抑圧は〈禁圧(抑制)suppression〉と違って,その過程それ自体も無意識的である。すなわちある観念や衝動をこれは良くないと意識的に考えて抑えつけるのではなく,その観念や衝動が心の中に存在していることそれ自体が否定される。…

※「弾圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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