化学辞典 第2版 「回転ディスク電極」の解説
回転ディスク電極
カイテンディスクデンキョク
rotating disk(disc) electrode
ボルタントメトリーにおける指示電極の一種.円筒形の絶縁体の底面に埋め込まれたディスク(円盤)型の電極が溶液と接触するように構成され,電極の中心を通る軸のまわりで回転する電極.電極材料として,金属,半導体,炭素などが用いられ,絶縁体としては,テフロン,エポキシ樹脂,ガラスなどが用いられる.回転ディスク電極では,反応化学種の電極への輸送が主として対流拡散によって行われ,物質移動速度を電極の回転速度により制御できる.静止電極を用いる場合と異なり,一定回転速度において,定常電流-電位曲線を得ることができる.そのため,ポーラログラフィーと同様に,ボルタンメトリーにおいて広く用いられている.回転ディスク電極への物質移動の問題は,V.G. Levichにより,はじめて正確に取り扱われ,限界拡散電流は次式により与えられた.
i = 0.62nFAD 2/3ν-1/6ω1/2c
ここで,nは1個のイオンまたは分子当たり電極で交換される電子数,Fはファラデー定数,Aはディスク電極の面積,Dは反応化学種の拡散係数,cは反応化学種の溶液中の濃度,νは溶液の動粘性率,ωは電極の回転の角速度である.ディスク電極の外側に絶縁体を介して環状の電極を有するものは,回転リングディスク電極(rotating ring-disk electrode)とよばれる.ディスク電極とリング電極との電解条件を独立に制御することにより,ディスク電極で生成した化学種をリング電極で検出することができ,電極反応生成物の同定に広く用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報