日本大百科全書(ニッポニカ) 「国連監視検証査察委員会」の意味・わかりやすい解説
国連監視検証査察委員会
こくれんかんしけんしょうささついいんかい
United Nations Monitoring, Verification and Inspection Commission
略称UNMOVIC。イラクの大量破壊兵器の廃棄を目的に1999年12月、国際連合の安全保障理事会決議1284に基づき創設された機関。2002年11月、アメリカが対イラク武力行使の構えを強めるなか、フセイン政権がそれまでの非協力姿勢を改め、査察受け入れに方針転換したことを受け、前身の国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)のイラク撤退以来4年ぶりにイラク国内で査察活動を開始。スウェーデン出身のハンス・ブリクスHans Blix委員長をはじめ、世界各国の専門家からなる約150人の査察団をイラク国内に送り込み、湾岸戦争(1991年)の停戦条件に違反する生物・化学兵器や弾道ミサイルの探索をイラク全土で繰り広げた。査察は、イラクが提出した申告書や、アメリカ・イギリス両国が提供した情報をもとに、兵器開発の疑惑施設を抜き打ち訪問するなどの方法で行われた。しかし、めぼしい発見がないまま、2003年3月、米・英両軍のイラク攻撃によって活動は打ち切られ、フセイン政権の崩壊とともにその役割を終えた。2007年6月、安全保障理事会決議1762にて任務を終了。
[尾関航也]
『ウィリアム・リバーズ・ピット、スコット・リッター著、星川淳訳『イラク戦争』(合同出版・2003)』